Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

あたしと魔女の扉

あたしの名は、リーズン・カンシーノ。理性(リーズン)って名前は、母さんのサラフィナがつけてくれた。
(pp.9-10)

リーズンはオーストラリアに住んでいます。魔法が使えるのですが、まだそれにハッキリと気付いていません。実は、

昔、ある男の子のことを死ねばいいのにと思ったら、次の瞬間、本当に死んでしまったことがある。
(p.227)

こんなことがあって、トラウマのようになっているのですが、これが実は魔法なのです。

キレると大変なことになるので、サラフィナはリーズンをキレないように育てますが、でも、キレるときはキレるものですよね。リーズンという名前も理性的に振る舞って欲しいという願いがあるのでしょう。ちなみにリーズンの趣味は数学。名前にあった趣味です。

母親のサラフィナは、祖母のエズメラルダから逃亡し続けたあげく、心が病んで精神病院に入ってしまいます。そこでリーズンはエズメラルダの家に行くことになるのですが、もちろんエズメラルダも魔女です。リーズンは最初からどうやってそこから逃げ出すか、ということばかり考えています。

そのリーズンを手助けする少年はトム。トムは裁縫が得意ですが、やはり魔法が使えます。男なので魔女ではありませんが。

ところで、トムが散らかった部屋にリーズンを招いたときに、こんなことを考えます。

きっと、ぐちゃぐちゃな部屋だと思っているんだろう。ここは、ぼくの作業部屋だ。ぼくの目から見れば、すべてがあるべきところに片づいている。
(p.71)

机の上が地層のようになっている人がいませんか。そのような人は、ちゃんと書類を想定通りに置いているので、勝手に場所を変えたりしたら本気で怒ります。

さて、リーズンがとある日、密かに見つけた鍵を使って鍵のかかったドアを開けてみると、そこは雪国であった。てなわけでテレポートしてしまうのです。これが「扉」です。その後、戻るに戻れなくなってしまって、トムとエスメラルダが何とか助けようとして雪国に探しにやってきます。雪国というのは実は冬のニューヨークなのですが、そこでJ・Tという少女と出会います。もちろんJ・Tも魔法使いなのです。だいたい出てくる人は魔法が使えます。

とはいっても、そんなに派手な魔法はなかなか出てきません。ちなみにこんなシーンがあります。

「最後のひと切れがいちばんおいしいのよ」
(p.212)

これはピザの話なんですが、ある意味魔法かもしれませんね。最初のひとひらとか、最後のひとつとか、魔法がかかっていたりするものなのです。

中途半端ですが、最後に、サラフィナのありがたい言葉で閉めておきましょう。

簡単にイエスと言っちゃだめ。それじゃ、相手の質問の真意がわからないでしょ。
(p.228)


あたしと魔女の扉
ジャスティーン・ラーバレスティア
大谷 真弓 翻訳
ハヤカワ文庫 FT
ISBN: 978-4150204792