Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

奇怪な賊 八丁堀「鬼彦組」激闘篇

江戸八丁堀の同心、鬼彦組というグループが活躍する時代小説、だけど先日紹介したように、これだけ読めばラノベ感覚だった。割と読みやすい。この作品はシリーズ物の15作目らしいが、実は私は他の作品をまだ読んでいない。

ざっくりあらすじだが、賊が田島屋に押し入って千両箱が盗まれる。しかし犯人も分からないし、特に侵入経路が分からない、みたいな話。

昨日店仕舞いしたときに、丁稚の平吉と安助が戸を閉めた後、猿も差し込んだと言ってやした」
(p.25)

って何?

猿は、戸締りのための戸の框(かまち)に取り付け、柱や敷居の穴に突き挿してしまりとする木片である。
(p.25)

框というのは戸の床のところで、ここに差し込むロックのことらしい。しかし猿という表現に違和感があるし、この猿というのがこの後何度も出てくるので、本当に猿がいるのかと思ってしまったりする。わざとやっているのなら、そこまでやらなくてもいいような気がしたが。

この「猿」が差し込まれた戸をどうやって開けたか、というのがミステリーになっている。途中に出てくるのが、竹竿を持った不審者。竹竿といえば船頭らしいが、

船頭の使う棹より、細くて長かったらしい
(p.81)

棹を使って棒高跳びのように塀を飛び越えるのはちょっと無理ということだ。メンバーはこの聞き込みで、棹を持った人物を探そうとするのだが、私ならその前に棹そのものを探す。見かけないような竹竿なら目立ちそうだし、そんなの持ってうろちょろする訳もないだろうから、近くを探せば出てきそうな気がしたのだが。

戦闘シーンもあるが、そこもライトな感じでサラっと終わってしまう。柴連とか津本陽さんの作品に比べると味気ない。

激闘シーンよりも、日常光景の描写が結構凝っている。

十九文見世は、何でも十九文で売る見世で、現在の百円ショップのようなものである。
(p.203)

両国広小路の光景なのだが、こういうのはなかなか趣があって面白い。


奇怪な賊 八丁堀「鬼彦組」激闘篇
鳥羽 亮 著
文春文庫
ISBN: 978-4167911416