Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ブランケット・キャッツ

今日は重松清さんのブランケット・キャッツ。猫が出てくる話です。7つの短編が入っています。猫がかなり大きな意味を持つ作品群ですが、猫を描いた作品というわけではありません。

日常生活の中に、突然「異物」が入ってきてドラマが生まれる
(p.379)

ブランケット・キャットというのはレンタルの猫です。三日間だけ借りて一緒に生活するわけです。猫がいない世界に猫が入ってくることで、いろんなサプライズが生まれます。周囲がざわざわします。

自由を認め合うのって、けっこう不自由だと思わないか?
(p.36)

そういうこともあるような気がします。ていうか、自由というのが本質的に不自由なものなのでしょう。猫が一匹やってきて、二人で取り合いをすれば自由という概念は成立しようがありません。どちらかが我慢することになります。

2つ目の「助手席に座るブランケット・キャット」は横領する女性の話ですが、

うちの車って、ワイパーの音は「シャッキン、シャッキン」だし
(p.71)

これ何となく分かりますね。最新型の車もそういう音がするのでしょうか。

擬音も面白いですが、作中にいきなり教訓的な言葉で出てきてハッとします。

みんなひとりきりなんだよ。一人で生きていくんだ。
(p.300)

「旅に出たブランケット・キャット」の猫のセリフです。他の作品は猫視点の描写は少ないのですが、この作品は猫のタビーが旅に出てぶつぶつ語り掛ける構成になっています。

「我が家の夢のブランケット・キャット」には写真を撮ることにこだわるお父さんが出てきます。

いまは納得できなくても、写真やビデオに残しておけば、いつか絶対に「撮っておいてよかったね」と笑えるはずなのだ。
(p.349)

私はかなりデジカメで撮影しまくる方なのですが、そこにあまりこだわりはありません。後で笑えるような一枚があるかというと、よく分かりません。カレースパゲティを撮影したのとか、別の意味で笑えそうですけど。

ちなみに、個人的に一番気に入ったのは「嫌われ者のブランケット・キャット」でした。

ブランケット・キャッツ
重松 清 著
朝日文庫
ISBN: 978-4022645951