Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

魔法科高校の劣等生 四葉継承編

16巻は四葉継承編。ザックリあらすじを紹介すると、四葉の当主の真夜が深雪を次期当主に指名する話です。

当主の指名は四葉家の新年の集会である慶春会で行われるので、それに出席するのを阻止しようと無駄な抵抗を試みる無謀な人達をチャチャッと片付けて、司波兄妹は四葉家の一員として魔法師の世界で認知されることになります。本編は特に深雪の心的葛藤がわちゃわちゃしていて面白いです。

妨害工作のところはバトルシーンもありますが、敵側の戦力があまりに貧弱貧弱ゥ、で話にならない。達也の方はあまりおおっぴらにできない必殺技を封印して戦わないといけないので、面倒な戦いになってしまいます。後先考えずに勝てばいいのなら相手を全滅させれば一瞬で終わる話なんですが、相手は身内だし、そのような能力者と戦っていることを知らないでケンカを売ってくるわけですから面倒すぎます。

この大きすぎる能力はいろんな意味で問題になっていて、

大きすぎる力は世界の安定を損なう。
(16巻、p.77)

一強の世界よりは複数でバランスを取った状態の方が安定するというのは一理あると思います。特に、一強の場合はその支配者が破綻したら世界全体が混乱しますから致命的という論理もあります。ただ、本当に一強は安定を損なうのかというと、そこは微妙な話かもしれません。未だ人類は本当の一強の時代を経験していないので、案外安定する可能性はあるでしょう。日本という狭い範囲でいえば、江戸時代は徳川一強と考えてよいと思いますが、日本は安定してなかったでしょうか。じゃあ安定していたかといわれると、そうでもないような気もしますが。あるいは、徳川の中でも勢力争いがあったりとか、そういう所でのバランスがとれていたのかもしれません。

魔法の使い方に関しては、執事の葉山のこの言葉がいい。

ただ私は自分の能力を自分の選んだ仕事に使っているだけでございますよ
(16巻、p226)

葉山は登場人物紹介のところに「真夜に仕える老齢の執事」とただ1行だけしか書いてありません。挿絵にも出てこないから顔も分からない状態です。謎の執事です。このセリフはコーヒーを入れるときに魔法を使ってうまく入れたという説明です。能力は使わないともったいないですよね。

ということで、今日の一言は、

恋は素直になった方が負け
(16巻、p.245)

これ、個人的には聞いたことがないのですが。しかも、本編では素直になった方が例外的に勝つ話になっているし。


魔法科高校の劣等生 (16) 四葉継承編
佐島勤
石田可奈 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048651165