Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

魔法科高校の劣等生 古都内乱編

今日は魔法科高校の劣等生「古都内乱編」、小ネタ的な名言はいくつか紹介しましたが、ストーリーに関しては触れていなかったので、そちらを中心に少し書いておきます。

まずこの編、ストーリーを超要約すると、周公瑾という敵を片付ける話です。周公瑾は鬼門遁甲という逃げ技を持っているため、なかなか片付けることができません。この技の論理的詳細はストーリーからはよく分からない(分からないように書かれている)のですが、ザックリいえば感覚を改変して錯覚させる系の技のようです。

季節的には論文コンペと重なっています。前回の論文コンペは発表の途中で乱入事件が発生して市街戦になってしまいましたから、結果が一体どうなったのか謎でしたが、今回は前回のような襲撃があると想定して警備を厳重にするという前提で話が進んで行きます。

本編を支えているテーマは「伝統派」というグループを中心とした思想です。この流派、設定上は古式魔法師の一大派閥ということになっていますが、これが科学的な技術を融合して魔法を使う現代魔法のグループと対立関係、という構図になります。

この話に限らず、一般的に、対立する集団と集団の争いというのは、どんなストーリーでも基本中の基本になる構造であり、特に新派と旧派というのはありがちなパターンでしょう。そして、各派閥はさらに細分化されたグループとなり、同じ派閥の中でも対立関係が生まれてフラクタルのような構造を持つことになります。

彼らは伝統派と名乗っていますが、本物の伝統を継承する術者から見れば、『異端派』と言うべきです。
(14巻、p.166)

本編では古術魔法を使うグループの中にも派閥があって、互いに反発するわけです。対立といってもいきなり戦闘を始めるようなものではないのですが、伝統と呼べるような歴史があればあるほど、いろいろドロドロとした確執があるのは確かです。周公瑾は主流の魔法師の対抗勢力であるという共通点を利用して伝統派の協力を得ようとしますが、もともと対立している構造の中に割り込んできますから、ちょっとしたトリガーでバトルは勃発します。

本編は九島光宣が高レベル魔法師として登場しますが、近接した遺伝子の組み合わせで高い魔法力をgetすると同時に副作用として欠陥を持ち合わせる、というルールも一般的によく見られるものです。

魔法ではありませんが、高い能力の代償として欠陥を抱える、という定番のパターンはマンガ「地球へ」でも見られます。「地球へ」は超能力を持っているミュウという人類が代償としていろいろ欠陥を持ち合わせる役でした。RPGでいえば、スタート時の能力の合計が決まっていて、特定の能力に値を集中させると他の能力が低下してしまうわけで、そのようなイメージで説明ができる現象です。

光宣の場合、魔法力は最強だが体力がない、というキャラになっています。体力といっても、ストーリーの中では、魔力が強すぎてそれを維持するだけのフィジカルがない、というような理屈になっています。


魔法科高校の劣等生 (14) 古都内乱編 (上)
電撃文庫
佐島勤
石田可奈 イラスト
ISBN: 978-4048668606

魔法科高校の劣等生 (15) 古都内乱編 (下)
ISBN: 978-4048691673