Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

美少女一番乗り

先日紹介した「終物語」に出てきたので読んでみました。山本周五郎さんの「美少女一番乗り」。短編が10作入っています。最後の作品が書名と同じ「美少女一番乗り」というタイトルです。

殆どの作品が「少女倶楽部」やその増刊号に掲載された作品。どのような読者層を想定していいのかよく分からないが、内容は普通に時代小説で、ただし少女が出てくるというのがポイント。

個人的には「鳥刺しおくめ」のような、少女だけど超強い、みたいなのがいいですね。おくめが逆上した侍に斬りかかられたときのセリフが、

「笑わせるな、こうして棹を持ったらおいらの天下だ。猿っ娘の綽名を伊達に持っちゃいねえぞ。かけすのように押さえてやるからそう思え」
(p.132)

本当にやっつけてしまいますが、鳥刺しというのはトリモチをつけた棹で鳥を生け捕りにするお仕事です。というわけで「かけす」なんですね。棒を持たせると強いのです。猿っ娘といえばこの本を紹介してくれた神原のイメージですが、案外それで合ってるかも。

「美少女一番乗り」のお弓は薙刀の達人でしかも熊を使うというのが魅力的です。喧嘩したら怖いかも。その熊の名前が五郎というのが少しおちゃめです。

 

美少女一番乗り
角川文庫
山本 周五郎 著
ISBN: 978-4041290118