Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

君たちはどう生きるか (2)

昨日の続きで、君たちはどう生きるか。3章(?)は「ニュートンの林檎と粉ミルク」という奇妙なタイトルが付いている。この部分、解説では「資本論入門」と指摘している。子供でも分かる資本論である。

そこはさておき、ニュートンの話。ニュートンが林檎が落ちるのを見て引力を発見したとか、それは創作だとか、いろんな話もあるようだが、ニュートンの面白いところに目をつけている。

ニュートンが偉かったのは、ただ、重力と引力が同じものじゃないかと、考えついたというだけじゃあない。その思いつきからはじまって、非常な苦心と努力とによって、実際にそれを確かめたというところにあるんだ。
(p.81)

林檎が落ちるところなんて、見た人が大勢いそうなものだが、そこから引力という発想に結びつけるという所が尋常ではない。というのが世間一般の解釈だと思うのだが、この本ではソコじゃなくて、その思いつきを検証する行為が凄いのだと主張している。確かにそうだ。憶測だけで「忖度」だとか「指示したに違いない」とか主張している人たちにはこの本を読んでもらいたいものだ。

当たり前というのが一番難しい、ということにも触れている。経験を積むことで、いろんなことにうまく対応できるようになるが、それは先入観で判断する場面が増えるということでもある。考えずに何でもできるのはいいことかもしれないが、真実を重視するつもりなら、一度はよく考えてみるべきなのだ。

だからねえ、コペル君、あたりまえのことというのが曲者なんだよ。わかり切ったことのように考え、それで通っていることを、どこまでも追っかけて考えてゆくと、もうわかり切ったことだなんて、言っていられないようなことにぶつかるんだね。
(pp.81-82)

受験生が勉強するときに、まず基礎を固めて、それから応用問題を解こうとする。方向としてはそんなに間違っていないように見えるかもしれないが、実は、基礎というのは一番難しいのである。応用なら公式や原理を組み合わせたら何か出てくる。じゃあその原理はなぜ成り立つのかといわれると困るのである。

(つづく)

 君たちはどう生きるか
吉野 源三郎 著
岩波文庫
ISBN: 978-4003315811