Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ころころろ

今日は「ころころろ」を書いてみよう。「しゃばけ」シリーズの8作目。これで繋がった【なにが】。

ちなみに、文庫本の「ころころろ」の巻末にはスペシャル対談として、萩尾望都さんとの対談が収録されている。「いっちばん」は高橋留美子さんとの対談。

この巻も5つの短編からなるのだが、全体としても1つの長編という構成になっている。最初の「はじめての」は目の話。親分が連れてきたお沙衣さんが、

「あたし、おっかさんの目を治すのに、七つのお宝が必要なんです」
(p.16)

というホンマカイナみたいな胡散臭い話をするところから始まる。このお宝を奉納して社を建てると目が治るというのだが、その話を持ち込んだ藪医者というか詐欺師は後で酷い目にあってしまうのだった。

2つめの話は「ほねぬすびと」。若だんなが起きると目が見えなくなっていた。原因が分からない。アタフタしているところに、干物を船で運んで欲しいという武士がやってくる。この武士が曲者なのだが若だんなは結局見もせずに事件を解決してしまう。その本筋は置いといて(笑)、

「ああ、小さな人のような姿が、縁側の先に立っておられたんだたよ」
(p.127)

これが生目神社の品陀和気命という神様で、後につづく。ちなみに「ほねぬすびと」は話の最後に説明が出ている。

『骨盗人』相手の骨折りを盗む。ただ働きさせる者。(東京堂出版 江戸語辞典より)
(p.128)

3つめの話はタイトルにもなっている「ころころろ」。若だんなの兄やである仁吉が大立ち回りをするのだが、この妖(あやかし)、本気出したらケンシロウなみに強い。それが河童を探してウロチョロする途中、小ざさという幼女に出会う。

あたし、河童の居場所を知ってるよ。
(p.136)

てなわけでケンシロウ【違】と幼女が河童を探しに行くわけだが…、ろくろっ首とか骨傘とか、いろいろ妖が出てきてややこしいことに。

4つめは「けじあり」。けじありってどういう意味か私は一瞬で理解したのだが、

一体“けじあり”とは何なのだろうか。
(p.197)

とか書かれると心もとなくなる。この話はもう一人の兄や、佐助が活躍する。しかし佐助は若だんなの付き人ではなく、なぜか小間物屋の主人になっている。不思議な世界だが、妻のおたきがさらに不思議で、実は鬼だという設定になっている。説明しようにもややこしくてどうしようもない。ここで最初に紹介した高橋留美子さんが出てくるわけで、ビューティフルドリーマーの世界なんだね。これが。うる星やつらも鬼の話だし。

5つめの話は「物語のつづき」。ついに生目神との対決になる。神との対決ってハルマゲドンみたいな話ではなく問答なのだが、神とは何かと問われた仁吉が、

神とは祟る者なのです。
神は犯す者なのです。
神は喰らう者なのです。
(p.264)

キリスト教の神も結構ヒドいけど。この神様をスズメ捕りみたいな罠で捕まえてしまうから物語って凄い。しかし、

神は約束を破らぬが、人はどうだか分からぬからな
(p.278)

確かに国の間で交わした公式な合意すら守らない国とかありますからね。説得力がある言葉だ。そして、問答というのは、話の続きを当てろというのであるが、まず出されたのが桃太郎。桃太郎のその後は、ってテレビ番組にありそうなネタだな、あの人は今!、みたいな。しかし桃太郎の話は妖としてレギュラー出演の鳴家が

鬼ヶ島の鬼達、かわいそう!
(p.284)

と言い出したからややこしくなる。鬼からみた桃太郎とは、一方的に攻め込まれて宝を強奪された話らしい。だから桃太郎は悪い奴で捕まって罰を受けただろう、というオチを予想したりして、混乱してどうにもならないので、強引に勝負は次の問答に持ち越すことになり、次のお題が浦島太郎。これは若だんなが話の続きを貧乏神から聞いていたのだが、それが肝心の生目神が知らない展開で判定できない。そこで、

この話の続きをうまく言い当てれば、今度こそ若だんなの目の光りを返す
(p.302)

もはや神様も信用できないような気がしたのは私だけ? 最後に仁吉の言う言葉、

神は人に、時に、置き去りにされる
(p.321)

何だか悲しい話だ。神様もかわいそう。

ころころろ
畠中 恵 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101461281