Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ゆんでめて

何か途中飛んでますけど、今日は「しゃばけ」シリーズの9作目、「ゆんでめて」から紹介する。この本は5つの短編が入っている。

1つ目は本のタイトルにもなっている「ゆんでめて」。ゆんでは「弓手」、めては「馬手」。馬に乗りながら弓を使うところを想像してみよう。この話は、妖の「屏風のぞき」が行方不明になってしまい、若だんながそれを探すという筋書き。探すのに頼ったのが事触れの権太。

 「若だんな、事触れというのは、鹿島の事触れのことです」
 常陸国にある鹿島神宮は、朱印領二千石と言われる大社だ。年の初めの春、一年の吉凶を占い、その託宣を神官である禰宜が、人々に告げたのだという。これが鹿島の事触れであった。
(p.21)

占い師みたいなものか。神官だから神託だが、この権太がなかなかの能力者で、いつもの話の流れで妖と戦うことになるのだ。

2つ目は「こいやこい」。若だんなとひょんなきっかけで友達になった小乃屋の若だんなの七之助が、上方に住んでいる幼馴染の千里を嫁にもらうことになる。ところが江戸にやってきたのは5人の千里だった。この中から本物を当てないと嫁に来ないというのだ。しかも七之助は子供の頃に見たきりなので、千里の顔が分からない。

3つ目は「花の下にて合戦したら」。若だんなが花見に出かけてドンチャン騒ぎになる。狐と狸が本格的な化け合戦になったのだが、なんということでしょう、真のボスキャラは他にいた。この話、花見に行くことになった後にオレもオレもでどんどん一緒に花見に行く妖が増えていってオールスターみたいになるのが面白い。この本の中では、個人的にはこの話が一番お気に入りだ。

4つ目は「雨の日の客」。このシリーズ、火事になることが多いのだが、この話は大洪水。長崎屋も床上浸水。鈴姫が悪い男に襲われそうになったときに最強の姉さんが現れて目からビーム【違】。というのは冗談としても滅法強い。やはりこのシリーズはバトルが面白い。

最後は「始まりの日」。時売り屋の勝兵衛が主役。若だんなの推理が相変わらず光っている。時を売るというと悪魔みたいなイメージがあるけど、そこまでファンタジーな話ではない。しかも悪い奴が絡んできて変な絵師まで加わってとてもややこしいことになる。ていうか火事になってしまう。江戸時代の方が火事には注意していそうなものだが、案外現代の方が火の扱いとか厳しいみたいだ。


ゆんでめて
畠中 恵 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101461298