Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ぬしさまへ

しゃばけシリーズ第2作。6つの短編が入っている。どれもいい感じなのだが、今回はその中から一番気に入っている「空のビードロ」を紹介したい。

松之助は桶屋の奉公人である。このシリーズの主人公、一太郎の兄だ。

東屋では奉公人の飯は、二杯までと決められている。
(p.99)

それで腹一杯食べたことがないという。そんな松之助だが、これがなかなかいいひとなのだ。普通、こういう設定だと、ひねた性格になりそうなものだが、何か根っこの所からいい。それなのに事件が起きると疑われてしまうし、ついに大犯罪寸前のところまで行ってしまうが、それでも踏みとどまる。

成り行きでお暇をもらうことになり、途方に暮れて、結局は父のいる長崎屋に来てしまう。そこで店の奥に通されて、朝飯が出てくるのだが、

二杯目の飯を盛っても、まだ添えられたお櫃の中に飯が大分残っていたのにはたじろいだ
(pp.146-147)

結局いいひとなのである。

ぬしさま
畠中 恵 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101461229