Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

しゃばけ

しゃばけ」は娑婆気だと巻頭に書いてあるし、変換したら一発で出てきたからそういう言葉があるらしいが知らなかった。不勉強も甚だしい。これはもう広辞苑を一度、読みきるしかないかとか思っているのだが、シリーズの最初の作品がこの「しゃばけ」である。私が読んだのは文庫本なので、以降のページ数は文庫本に依る。

ざっくり言えば物の怪系の小説。もののけ。舞台は江戸。一太郎というワープロみたいな名前の若旦那が主人公で、守り人に佐助という犬神と仁吉という白沢が憑いている、違った、付いている。私はこういうバックグラウンドは「神様はじめました」や「化物語」等で慣れているから別に気にしないが、これ系の小説は普通に支持されるものなのだろうか、それともマニア限定なのだろうか。よく分からないが、Amazon のレビューは結構な数憑いている、違った、付いている。

舞台が江戸時代だから、金銭感覚からして分からない。

「大工は手間賃が一日銀五匁だ。(略)」
「それって、多いのかい?」
(p.155)

この後ちゃんと解説してくれるので助かる。そのような細かいところが行き届いているから読みやすくていい。

一太郎は長崎屋という薬種問屋の若旦那で、何ともたよりない。怪しい薬も売っているのだが、

それなら高い薬を買うよりも、長生きには良い方法がある。もし体のことを思うのなら、食べる物に気を使うことです。
(p.195)

高価な謎の薬を売ってもいい場面なのだが、良心的だ。しかし一太郎は病弱ですぐに疲れて寝込んでしまうタイプなのに、こんなことを言って説得力があるのかないのか。

ストーリーは殺人事件。一太郎は目撃者だし理由もあって最後は猛烈に狙われることになってしまう。強烈な妖が傍に控えているのに案外ジタバタするのは、ちょっとリアルかもしれない。

ところで、話の途中で大工道具がバラで売られるというシーンがある。道具箱に1セット入っているのだが、1つ道具が欠けていたという。それが何かを知りたい。売られた道具は、鋸(のこぎり)、手斧(ちょうな)、錐、鑢(やすり)、木槌、金槌、玄翁(げんのう)、釘袋、曲尺(さしがね)、砥石、鉋(かんな)、鑿(のみ)、これで全部なのだが、若旦那はこれだけでは何が欠けているのか分からない。私は分かったぞ。えへん。

 

しゃばけ
畠中 恵 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101461212