Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

名探偵・森江春策

これはまだ紹介してなかったですよね、10月25日に、雑記のところで読んでいると書きましたが、かなり前に読み終わっていました。

その時も紹介しましたが、文体が独特で面白いですす。江戸川乱歩怪人二十面相のようなレトロな表現が使われています。小学生の頃によく読んだものです。

この本には5つの短編が入っていますが、全て、森江春策が事件を解決するストーリーです。最初の作品「少年は探偵を夢見る」は、森江君が小学5年生の時の話です。これが、2作目は中学3年生、3作目は大学生になっていて、4作目は就職しているという感じで、森江君がだんだん成長していく構成になっているのが面白いです。

会話には関西弁が使われています。

人間とうやつは、どんなに自由に行動しているつもりでも、いつのまにか出来合いの秩序の中にはまりこんでしまうもんや。
(p.213)

関西育ちなので、個人的にはなつかしい感じがしますね。ちなみにこのセリフはそう深い意味ではなく、習慣が事件解決のヒントになる、程度の話なのですが。

4番目の話、「街角の断頭台」では、会話する場所が凝っています。

昭和二、三十代の雰囲気を色濃く残したバーだった。
(p.238)

そこまで時代が戻ったら全然分からないのですが、バーというより立ち飲みの酒屋みたいな雰囲気が頭に浮かんでくるから、私の頭脳は全然イメージが掴めていないのかもしれません。

最後の作品は異色作で、何とタイムマシンが出てきます。しかも森江君、タイムトラベルまでしてしまいます。もちろん、犯行そのものにはタイムトラベルは使われていないことになっていますが。


名探偵・森江春策
芦辺 拓 著
創元推理文庫
ISBN: 978-4488456078