Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

徹底検証「森友・加計事件」

最近売れているそうで、気になっていたのだがスルーしていたのに、とうとう買ってしまった。

amazonカスタマーレビューの盛り上がりっぷりもなかなかのものだが、それはそうとして、森友・加計問題というのは、先の衆院選挙でもはや国民の関心事ではないことが証明されたようなものだと思っている。台風の目といわれた某政党の惨敗の原因は某代表の排除発言だと力説する人もいるようだが、個人的には未だにモリカケから脱却していない判断力皆無の政党と認識されたのではないかと思っている位だ。

にもかかわらず、TVや新聞は今なお国会で追及しろという論調が主流派である。国民にまだそんな人がいるとは思えないが、もしいるのなら、この本を読んでから同じことが言えるのか再考してみるといいかもしれない。

ところで、国会で討論するとどれ位コストがかかるのかは知らなかったのだが、2月14日から5月9日までの衆院予算委員会でこの問題が議論された36時間40分は、

予算委員会だけで約二十三億円がこの人物を巡る「疑惑追及」に消費されていたことになる。
(p.15)

という計算が紹介されている。もちろんこれは税金から支払われるのだ。もはや国民はこんなことを国会で議論したがる政党を支持する気はない。

この本は、偏向報道がどのように印象操作を行ってきたかを丸裸にしている。基本的に印象操作というのは都合のいいことだけ知らせ、都合の悪いことは沈黙することで成立する。捏造までは普通はしない。するマスコミもあるけど。例えば森友学園への土地売却問題。エラい人の指示で安く売却されたと思っている人がいたりしないか?

また、実は、森友が購入した国有地と同条件の土地は近隣に三カ所あり、それらを比較すれば森友の値下げ幅は、実は全く特別ではない。
(p.45)

そんなに実は実はといわなくてもいいような気もするが…

朝日新聞は森友に売却された土地の隣が14億2300万円で売却されていて、森友学園の土地はその1/10の価格で売却されたと報道したのだが、

だが、豊中市は同時期、国交省の住宅市街地総合整備事業国庫補助金として七・一億円と、地域活性化公共投資臨時交付金として総務省内閣府から六・九億円が支給されているのである。合計十四億円。つまり、豊中市の実質負担金は二千万円で、籠池の実質負担額より安い。
(p.120)

といったことは一切報道しない。

野党もマスコミもこの事実を隠蔽しながら、豊中市が十四億円で買った隣接の同規模地を籠池が十分の一の価格で購入したという偽りの情報を流布し続けていたのである。
(p.121)

まだ続けているような気もするが。こういったことは今のようなインターネットで検索できる時代なら個人で調べることも可能だが、善良な国民というのはそういう面倒な手間はかけないで天下の新聞を信用するから話がややこしくなる。

そもそも、忖度という言葉が出てきたときに、私は、この事件は終わりだと思っていた。忖度というのは「言っていない」ことを保証する言葉なのだ。総理が何も指示していないから忖度が成り立つのである。ところがソンタクという語感が良かったのか、これがなぜか流行した。もちろん広めたのは、

だが、マスコミがこの「忖度」疑惑を大々的に報じ、安倍政権を攻撃し始めたその後の有様を見ると、
(p.62)

マスコミである。しかもウケた。何もしていないという言葉なのに、何故か悪いことをしているような印象が広まるのが面白い。

マスコミの大技としては、加計学園計画の記録文書があったという朝日新聞のグラデーション報道が紹介されていて、実に興味深い。

朝日新聞は、入手したスクープ文書の写真を一面左に大きく掲載しているのに、周囲に黒い円形のグラデーションを掛けて、一部しか読めない細工を施しているのだ。
(p.150)

新聞に出た画像はもちろん「総理のご意向だと聞いている」という箇所はハッキリと読めるようになっている。しかしその後がだんだん読めなくなってしまう。続きは会員しか読めません、ではなくて新聞紙上の印刷がそうなっているのだ。なぜか、読めない細工をした箇所には、こんなことが書いてあったという。

「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。
(p.151)

よく分からない表現かもしれないが、著者によれば、

もし「総理の指示」があったらこういう言い方にはなるまい。
(p.151)

と推測している。そりゃそうだな。じゃあ何でそんな細工をしたかというのは、

文書全文を報道すると、朝日が贋造したい「安倍スキャンダル」が雲散霧消してしまうからだ。
(p.152)

このように理由を推理している。私は朝日といえば記事のためなら記者がサンゴに落書きをして心無いダイバーの仕業にするような社風だと根強く信じているので、この程度の小技には何の不自然さも感じないのだが、それにしてもよくバレなかったなぁ、というのが正直な印象だ。実はネットでバレバレだったのかもしれないな。籠池さんの百万円の束が麻雀劇画に出てくるような見せ金で、上下だけが本物、後は白紙の2万円しかない束ということすら知らなかったし、どうも勉強不足だ。

また国会でこの問題をウダウダやるつもりなら、こういう所も全部公開してさっさとカタをつけてもらいたいものだ。


徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪
月刊Hanada双書
小川榮太郎
ISBN: 978-4864105743