Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

極大射程

この本、Amazon で検索しても下巻しか出てこないんですよね、新潮文庫。扶桑社は上下見つかったのでリンクしておきますが、翻訳が違うようですね。

ボブ・リー・スワガーという、ゴルゴ13のようなスナイパーが主人公。罠にハメられて大統領暗殺を企んだ犯人にされてしまいます。最後に無実を証明したのはちょっとしたアイデア

やがて、ひとつのアイデアが浮かんだ。ごく単純なものだった。
(上巻、p.211)

このアイデアの種明かしは最後のクライマックス、法廷まで待たされることになります。これがなかなか秀逸で印象的です。この話は映画にもなっているはずなのですが、私は映画は見ていません。しかし、映画で盛り上がりそうなのは法廷ではなく、ボブが一人で120人の特殊部隊を相手に戦うシーンです。ランボーでも似たような状況のシーンがあったような。

部下を配置して、将軍が攻撃開始の合図を送った直後からバトルが始まります。

断固たる調子のスペイン語で話している将軍を、一発の銃弾が直撃した。頭蓋骨の後部下側、脊髄のすぐ上に命中した弾丸は、顔の前面まで穴をうがって、将軍の顎を吹き飛ばした。
(下巻、p.191)

小説なので(笑)、ボブが400ヤード先の丘から敵を狙って撃つと全部命中します。ヘリコプターまで出てきますが、パイロットを一撃で仕留めて落としてしまいます。まさに映画です。

個人的にこの小説で一番お気に入りのシーンは、オブライエン大佐から情報を聞きだすところ。

「十番目のブラックキング」
(下巻、p.93)

ブラックキングというのはライフルの愛称です。ボブはこの情報と引き換えにレア物のライフルを贈呈する約束をするのですが、この約束はボブの無実が確定した後に果たされます。

かつて狩猟で名を馳せたオクラホマ在住のある男は、玄関前の階段に荷物が置かれているのを見つけて首をひねった。包みを開けたとたん、老人はよろこびの声を上げた。
荷物の中身は、六四年前型のウィンチェスター・モデル七〇、.二七〇口径だった。
(下巻、p.389)

レアなライフルをそんな無造作に置くのは不自然な気もしますが、マニアの気持ちは何となく分かりますね。


極大射程〈上巻〉
スティーヴン ハンター 著
佐藤和彦 訳
新潮文庫
ISBN: 4102286055

極大射程〈下巻〉
ISBN: 4102286063