出だしのパンチラというかモロに見えるシーンは有名です。
羽川のやや眺めの、膝下十センチのプリーツスカートの前面が、思い切りめくれあがってしまったのだ。
(p.16)
アニメ「化物語」の初回がいきなりこのシーンですね。ツカミとしては秀逸かもしれませんが、現実世界ではこんなうまい話はありません。私もここ十何年の間で2回しか見たことがありません。しかもそのうち1回はオーバーパンツでガードしてたし。そもそもパンチラでツカむなんて発想そのものが、
なんっつーか、八〇年代のラブコメ漫画みたいな感じだったもん。
(p.36)
これではありませんか。ありませんかとか言われても困るかもしれませんが、80年代ってどんなのあったっけ。
まあこの話、表から見ればキスショットほにゃららという吸血鬼と阿良々木くんの話のように見えますが、実は裏から見たら羽川メインみたいな構成になっています。東京大学物語みたいに最後は夢オチにされてもおかしくない感じで、物語は全部、羽川さんの夢だった、みたいな。羽川さんといえば、
「……お前は何でも知ってるな」
「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」
(p.158)
この決め台詞も出てきますけど、
相手のために死ねないのなら、私はその人のことを友達とは呼ばない
(p.292)
こんなことを言えるのは、結構熱いですね。熱血。極論派みたいな感じです、羽川さん。
もちろん、忍野さんもいい仕事してます。
「礼なんていいよ。きみが一人で助かっただけさ、阿良々木くん」
(p.87)
いつもの決め台詞です。言ってることとやってることが一致しているかどうかは知りませんが。なかなか食えない男なので。
「助けない。力を貸すだけ」
(p.97)
ていうか、利用しているような気もするわけです。しかし、この忍野さんはストーリーの中ではロンリー派、いや、理論派です。奥が深い言葉もたくさん言ってくれます。例えば、
噂で判断しちゃあいけないね――相手が人であれ、人でないものであれ。
(p.95)
個人的には、相手が誰という情報をできるだけ判断に加えないようにしています。大学教授だろうが幼稚園児だろうが、正しいことを言えば正しいし、間違ったことを言えばそれは間違いなのです。善悪についても深い言葉が出てきますね。
正義の定義は人それぞれさ。他人を簡単に否定しちゃあいけないよ――きみにとっては悪党だったというだけさ。
(p.230)
もう一つ忍野の思想が見え隠れするのが「被害者ヅラ」という表現ですが、
「自分を被害者だとか、そんな風に思うなよってことさ、被害者面は――気に入らないぜ」
こんなセリフが出てきます。自己責任って感じなのかな。加害者とまでは言わずとも、おとなしくしてたら何も起きなかったでしょ、みたいな。
奥が深いといえば、キスショットのこの言葉はナルホドと思いました。
まあ吸血鬼は厳密には生物ではないがのぅ、
(p.103)
既に死んでますからね。いわば死物でしょう。undead というのは死者なのかというと議論になりそうです。
ところで、私はこの小説の英語版も持っています。
「じぁあお前のダカラが目当てだったんだよ!」
(p.140)
私はポカリする方が好みですが、これ一体英語だとどうなるんだ、と思って買ってしまったわけです。ちなみに、
"Then I was only after your toddy!"
(KIZUMONOGATARI WOUND TALE, p.137)
こんな感じです。
傷物語
西尾 維新 著
講談社BOX
ISBN: 978-4062836630
KIZUMONOGATARI: Wound Tale (英語)
NISIOISIN 著
Vertical
ISBN: 978-1941220979