Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

月光ゲーム―Yの悲劇'88

今日は推理小説です。月光ゲーム。月に吠えるわけではありませんが。何となく月といえば狂気のイメージが。

「僕も夜型人間やから判るよ。月の光が窓辺にさすと心の平安が訪れるっていうことか」
「違うの。月の光は人間を解放してくれるんやなくて、呪縛するの。人は月に踊らされて狂気に駆り立てられると信じてるわ」
(p.61)

私の好きなアルバムに Camel の Moonmadness というのがありますが、プログレ

ルナという人物が一番スゴいです。本名はルミなのですが、とにかくセリフが奇天烈で、ハルヒに出てくる長門さんを想像します。あれは人間じゃないようですが。

太陽とその他の惑星が創った月成長のエネルギーは、地球表面を覆う有機生命体の膜に貯蔵される。
(p.111)

というのはおいといて、本格推理小説です。何が本格かというと、ちゃんと読者への挑戦状が出てきます。ちなみに著者の有栖川さんはクイーンにハマっているという話が解説に出てきます。

先に紹介したセリフからも分かるように、関西弁が出てきます。特に京都。

神戸も好きやけど、やっぱり学生の街って京都でしょ? 勉強のことや人生について考え込んだりするのに、哲学の道や鴨川の川べりが最高の場所みたいな気がして。
(p.79)

登場人物は大学生。サークルの面子でキャンプに行くという設定になっています。そこで火山噴火に巻き込まれて、事実上の密室状態で殺人事件が多発します。つまり、犯人はその中にいるわけです。本格推理小説だから、実は最後に知らない人が出てくる…みたいなことはありません。

この小説、少しヘンな人が多いようですが、ルナ以外にヘンなキャラだと思ったのは武ですね。

俺以外の人間は本当に実在するのか?
(p.244)

誰か、実在しないと言ってやればよかったのに。神聖宇宙中央委員会とか出てくるのだし、この世は全て夢、幻で上等なのです。

まあとにかく本格的です。ストーリー中に何枚かヒントになる写真や図が出てきます。ただ、最初に出てきたダイイングメッセージは、個人的にはちょっとわざとらしい感じがしました。


月光ゲーム―Yの悲劇'88
有栖川 有栖 著
創元推理文庫
ISBN: 978-4488414016