Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

Fコース

バーチャという仮想現実世界のゲームの話。Fコースというのは、このゲームのコースです。AからFまであるらしい。ちなみに、Aコースという作品もありますが、そちらは私は読んでいません。

主人公は諸岡智里。

テストの点では、誰にも負けない。でも私には、夢や希望がない。家は裕福で環境には恵まれている。しかし、憧れの職業など今まで一つもなかった。
(p.109)

かなり屈折しています。実際はテストの点でも負けている人が多いかもしれませんが、夢がないというのはネットでよく見かけます。昔は単純で、お金が欲しいとか、それだけで夢になりました。今はそういうのではダメなんですね。

柳沢瑠華は智里の幼馴染です。中学まで普通だったのが、高校に入って不良になりました。

口調は乱暴になったし、顔はこんな化け物のようになってしまった。
(p.24)

持田菜穂子は瑠華の子分。そして、瑠華の妹のかや乃。この4人がプレイヤーです。ミッションは1時間以内に美術館に侵入してバッジスという画家の「手をつなぐ二人」という絵を盗み出すこと。

何かリアルなのかバーチャルなのかよく分からない設定です。個人的にはフィクションにしても設定があり得ないような気がしました。小説だから騙されてしまうけど、リアルにこんなことがあったらすぐに破綻するでしょう。そもそも、今時コンビニでも必ず監視カメラがあるのに、そんな簡単に警備中の美術館に入れるものなのでしょうか。唯一リアルな気がしたのは、

プレイしたいと思っている自分が、どこかにいる。
(p.167)

ここでしょうね。ここだけはリアルです。


Fコース
山田 悠介 著
角川文庫
ISBN: 978-4041049273