Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

寂聴 般若心経―生きるとは

昨日は書評を書いている途中で Windows が再起動してしまった。それも定めなのか。何かイヤな予感がするけど、今日の本は般若心経の解説書です。

もちろんプロが書く般若心経の本ですから、解説も書かれていますが、面白いのは瀬戸内さんの雑談です。

試験におっこちる。これもそうです。勉強しないから落ちたんですね。試験に通った。勉強したから通った。みんな因果です。原因があって結果があるんです。
(p.25)

因果の説法なのですが、比喩が分かりやすいです。何か騙された気がしないでもないですが。もちろん仏教の逸話もたくさん出てきます。次の言葉は「諸悪莫作、衆善奉行」の話。

三歳の子どもが知ってても、八十の老人もそれを行うことはできない
(p.26)

できないことをやれというのは何なんだ、というのが仏教の面白いところ。考えろとか悩めというところなのですが、

まあ、今はわからないのですから、わからないことを、あれこれ思い悩んでも仕方のないことです。
(p.44)

そんなことを言ってしまっていいのでしょうか。それを言ってしまうのが瀬戸内さんの味なのでしょう。いろんな話が出てきますが、瀬戸内さんの姉が亡くなったときの話。ご臨終ですと言われた後に、瀬戸内さん1人だけが残って、

それで私は一生懸命、なきがらに向かって話しかけました。「聞こえているなら口を動かして」って。そしたら、死んだ筈の姉の口が動いたんです。
(p.82)

怖いですね。恐ろしいですね。さよなら、さよなら、さよなら。つい淀川長治さんみたくなってしまいました。医学的にはあり得るのでしょうか。脳波がフラットになったら無理な感じもしますが、心肺停止なら脳が生きている可能性はあるわけです。

「空」の説明も面白いです。「色即是空、空即是色」は般若心経を知らない人でも聞いたことがあるでしょう。

ない、ない、ないづくし。すべてがない。それが「空」の姿であると言ってるんです。
(p.97)

奴らの足音のバラード、の最初の世界みたいな。カオスと空とは違うみたいですが。空集合というのは空の集合があると考えるのでしたっけ。あるのかないのか分からない。0個ある、みたいな。

だから「不生不滅」、生じもしなければ滅しもしない、と続きますが、これは納得がいきにくい。
(p.99)

単なる質量保存の法則のような気もしますが。今日の感想はここまで。多分明日に続きます。


寂聴 般若心経―生きるとは
中公文庫
瀬戸内 寂聴 著
ISBN: 978-4122018433