Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

東大2018 たたかう東大

ちらっと先日紹介した、東京大学新聞社が毎年発行している本です。今年は「たたかう東大」がテーマです。

巻頭カラーは脚本家の森下佳子さん。服の専門学校に行きたかったが、親がとりあえず総合大学に行けというので東大に入ったというのが何かズレているような気がしますが、文学部の宗教学というのは面白そうです。何で服の専門学校が脚本家になってしまうのか謎ですが。ありがたいお言葉を。

世界は高校時代に思っているより何千倍も広いので、あれこれ悩まずに今目の前にあることに全力で取り組むのが良いんだと思います。
(p.12)

何千という数字をどうやって出したのか謎ですが、私も知恵袋に回答を書くときに100万倍とか書くので、そういう意味かもしれません。

さて、本編は前年度と同じような構成なのですが、テーマが「たたかう」なので、章分けも、

第1章(受験編)入試を攻略する
第2章(駒場編)大学で競う
第3章(後期課程編)専門と向き合う
第4章(将来編)社会でたたかう

のようになっています。だらだら紹介してもアレなので、最初の方にある「東大教員だってたたかう受験生だった」からいくつか紹介しましょう。今更ですが、この本は東大を受験しようという高校生を想定した本です。

最初は慶応義塾大学教授の戸瀬信之さん。東大教員としては数学を教えているそうです。

受験期に正しい方向性を持って学んだことは必ず役に立ちます。
(p.29)

正しい方向性って何だろう。本文には「本質・本筋を理解する」、のような表現が出てくるので、それでしょうか。裏道も重要なんですけどね。ちなみに、戸瀬さんは理系だが国語が役に立ったと例示しています。

次は、准教授の永井久美子さん。

皆さんはぜひ自分に自信を持ってください。
(p.31)

本人は進路に迷いまくったらしいです。自信を持つというのは若い人の特権のような気もしますが、個人的には、学生までの間なら、自信どころか過信でも許されると思います。根拠のない自信というのは重要です。

トリは、名誉教授の畑村洋太郎さん。「失敗学のすすめ」の著者です。

きょろきょろしている時間があったらもっと動け
(p.34)

失敗してもいいからやってみろ、という当たり前の話なのですが。失敗したらデータが得られる。それが重要なんですよね。何で読んだのか忘れましたが、最近見たのが「間違えた問題に価値がある」みたいな話。問題集を全部初見で完答できたら、スゴイと思うかもしれませんが、それならわざわざ問題集をやる意味ありませんよね。やらなくても解けるのだから。解けない問題を確認して頭にデータを追加して解けるようにする、そこに価値がある、という話だったと思います。

私が昔からよく言うのが、「議論は論破された方が勝ち」。自分の主張が正しかったら、それだけのこと。何の向上もできません。論破されたら考えを改めてレベルアップできます。知識が増えます。論破されない議論なんて、自分にとっては不毛なわけです。

巻末の「2016年度学部・大学院別就職先データ」も面白いです。見てすぐに驚くのは、多彩な企業に就職していること。まるで柳生の草のよう、全企業に配置させるつもりか、と思ったほどです。

就職先も細かく見ると、去年も面白かったのですが、今年も面白いです。 例えば文学部からグーグルに入った人がいます。理系じゃないとダメな企業でもありませんが、どんなアピールをしたのか気になりますね。他にも、日清食品とか富士通とかトヨタ自動車とか、文学とどのような関係があるのか謎な企業がテンコモリで面白いです。アマゾンはギリギリ分かるような、分からないような。とりあえず書籍販売してますからね。数理科学研究科の博士課程から東本願寺というのもかなり気になりますね。何か悟ったのかもしれません。


東大2018 たたかう東大 (現役東大生がつくる東大受験本)
東京大学新聞社 編集
ISBN: 978-4130013017