Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

信義の雪 沼里藩留守居役忠勤控

時代小説です。捕物帳っぽい内容です。同僚がハメられて殺しの容疑で捕まってしまい、真犯人を探すというストーリー。

主人公は例によってそこそこ剣がつかえる深貝文太郎。この文太郎の言葉から。

運命というのは、決して逆らえぬようにできている。
(p.204)

これはある意味、真理なのです。だって、終わってからそうなった、というのを運命と呼ぶわけですから。それにしてもこの話のオチはびっくりしますね。

それはおいといて、この話、刀が出てきます。まず文太郎の刀、摂津守道重。これはお殿様にもらったもので、安月給の侍にしてはスゴいもののようです。そして、正宗。途中で出てきて何かなと思ったら、最後の死闘でまた出てきます。最後にこの話のキーアイテムである、三途守、あるいは三殿守。これは妖刀です。

見つめていると、何か引き込まれ、この刀の中の世界に連れていかれてしまうのではないかという、恐れのような気持ちが湧いてくる。
(p.280)

刀を抜くと何か斬りたくなるといいますが、妖刀はまだ抜いたことがないのでよく分かりません。

もう一本、刀が出てきますね。殺人に使われた刀です。この持ち主が犯人と疑われて逮捕されてしまうのですが、これは特に何とも書いてないので普通の脇差なのでしょう。その殺された女働いていた店、庄内屋の主人の悠之助の言葉。

ただ地道にやってきただけですよ。とにかく三十年なんて、あっという間でした。
(p.238)

店を30年も続けているのは凄いなと言われてこの返事なのですが、確かに30年なんてのも、過ぎてしまえばアッという間ですね。

最後の最後のオチがなければ、ゆるゆると読める本なのですが。いろいろ微妙だと思います。


信義の雪 沼里藩留守居役忠勤控
鈴木 英治 著
角川文庫
ISBN: 978-4041056165