Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

地獄変・偸盗 (2)

今日も何か本読む暇なかったので、昨日紹介した本「地獄変・偸盗」から「偸盗」(ちゅうとう)という作品を紹介させていただきます。盗人の話です。まず、盗人のくせにイイこと言ってる所というか、

一度した事は、三度するって云うじゃないか。
(p.11)

そうだっけ。実際やりそうですけど。この後、3度ならまだいいと続きますが。しかし、芥川はこの作品を駄作と自評していたようです。巻末の解説によれば、

作者自身「安い絵双紙」のようなもので、、「いろんなトンマな嘘がある」し「性格なんぞ支離滅裂だ」として、自分の一番の悪作だと自嘲している。
(p.215)

というのですが、個人的には、

己は何時の間にか、悪事を働くのが、人間の自然かも知れないと思い出した。
(p.28)

こんな表現が、芥川の鋭い視点な感じもするわけです。自己弁護には違いないですが、性悪説というのは確かにありますし。にしても、人間の自然というのはハッとするような言葉でしょう。

ストーリーですが、ざっくり紹介しておくと、太郎と次郎という兄弟が同じ女に惚れてしまって修羅場になる話です。最後のどんでん返しは凄いと思うのですが、悪作かぁ…。