Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

武曲II (2)

昨日の続きで「武曲II」です。昨日書きたかったというのは、高校生の心理描写みたいなところ。主人公の羽田は高校生だから、そのあたりの不安定な精神パターンが面白い。やんちゃなのです。

本当に俺は自分でも分からないまま、何かやったのだ。
(p.68)

自分でも意識しないでやらかしてしまう、というのは別に年齢に関係ないかもしれませんが、羽田のメンタルはそういう簡単な話ではなさそうです。病的な感じもします。そういう所が逆にリアルなので気になるのですが、例えば、

受験番号がなければ試験が受けられないのは当たり前だが、その机に貼られた番号と受験票の番号が、同じというのが気持ち悪い。
(p.175)

この感覚はよく分かりませんが、初詣に一緒に行った恋人の愛理が「もう道がない」と落ち込んでいるときに、

道がない、じゃなくて、道がありすぎる
(p.177)

みたいなことを言います。選択できないのは選択肢がないからじゃなくて、ありすぎるからどれを選んでいいのか分からないのだと。そういう本人が迷っていて身動きが取れない状態ですが、アカギに出て来たネタだと思いますが、問題に直面したときに人間の本質が出てくる。立ち向かうか、逃げるか。アカギに出て来た雀師は様子を見る、保留するのでしたっけ。道がありすぎるというのは面白い状況ではあります。

で、ほむらの話を書こうと思ったのだけど、それはそれでやっかいなので明日にします。最後に全然関係ない話だけど、この小説の光邑先生は京大中退、ホームレスの田所のおっさんは早稲田卒。誰かモデルでもいるのでしょうか。


武曲II
藤沢 周 著
文藝春秋
ISBN: 978-4163906621