Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

蒼のファンファーレ

今日紹介するのは競馬小説。

舞台は地方競馬、広島の鈴田競馬場で最も小さい緑川厩舎は、

藻屑の漂流先――。どこの競馬場でも、使いものにならなかった人や馬が流れ着く。
(p.016)

酷い言われようです。ヘンな人が集まる謎スポット。主人公は芦原瑞穂、この漂流先から19歳の女性ジョッキーがGIに挑むというストーリーです。じゃじゃ馬の瑞穂ちゃんは

熱血の薔薇騎士ミズホちゃん
(p.094)

とか言われていて、さながら魔法少女、要するに客寄せパンダにされている現状に常にイラっとしている感じですが、実はイライラは生まれつきですかね。主馬公【謎】はフィッシュアイズ。タイトルの「蒼のファンファーレ」の蒼は、

爛々と光る両の目は蒼い。
(p.005)

ということで、この馬の目の色からきています。性格も、

どうしようもない暴れ馬だった
(p.014)

やんちゃです。それをいかに調教するかという見せ場が各所に出てきてハラハラします。登場人物も、イケメン風水師のワン失声症で声が出ない木崎、馬方のジジイのカニ爺、ベテラン女性ジョッキーの二階堂冴香、アイドル少女ジョッキーの木下愛子、皆さん個性派揃いですが、さらにこの小説は馬の描写がなかなかいいです。フィッシュアイズのライバル馬のティエレンがレボルティオと駆けあうシーン。レボルティオは鈴田競馬場では連戦連勝で、乗っているのはベテラレジョッキーの浅井環。

 環が歯を食いしばり、力一杯鞭を入れる。押し出されるように、レボルティオが前に出た。
 すると、ティエレンも同じだけ前に出る。再び、環が鞭を振り上げた。鞭を風車のように回転させ、レボルティオを連打する。レボルティオが泡を吹きながら、必死に足を伸ばした。それをあざ笑うように、ティエレンも同じだけ前に出る。
(p.113)

本気で走ってもちょっとだけ勝てないというのはキツそうです。こういう勝負で負けた馬は潰れるというのですが、

タフであればあるほど、試されるのは気力だ。
(p.281)

強者の勝負は人間以上に厳しそうですね。最後のGIのバトルは写真判定


蒼のファンファーレ
古内 一絵 著
小学館
ISBN: 978-4093864725