モサドはイスラエルの諜報機関。この本は、実際にあったテロリスト暗殺計画を元にかかれたもので、つまりノンフィクションである。
当然、その信憑性に関して激論があり、それについて本編の後に「取材ノート」として数ページにわたって概要が書かれている。
ストーリーとしては、オリンピックでテロに関わったテロリスト11人を一人ずつ殺害していくというもの。フィクションなら007やゴルゴ13みたいな凄腕のキーマンがいるのだが、この本に出てくるエージェントは基本的に地味だし、結構ヘマをやらかすし、最後は精神を病んでしまう。 リアルな裏話は興味深い。テロリストは金がかかるという話とか。
一九七五年の数字によると、PLOファタハ派はテロリストの予算に一億五千万ドルから二億四千万ドルも計上していたという。要するに、テロリズムは金を食うビジネスなのである。
(p.146)
それを考えると最近ニュースに出てくるようなゲリラ的テロはあまりコストがかかっていないような気もする。昨今のテロはコストダウンに成功したのか。
諜報機関のメンバーに「考える」という習慣が要求されるというのも興味深い。エージェントというのは上からの命令に従って黙々と仕事をこなすというイメージが無きにしも非ずだが、そうではなさそうだ。
ただし規則も演習もすべてではない。理由があるからこそ規則が存在するのであり、演習も行われる。その理由を見きわめよというわけである。
(p.214)
テロリストを殺害するにあたって、第三者にはかすり傷すら負わせてはならない、というルールが適用される。その可能性があるのなら次のチャンスを待てというのだが、チームリーダーのアフナーはこのような質問をする。
「もし第三者が拳銃をぬくとか、われわれを逮捕しようとしたら?」
(p.111)
実際、暗殺現場にターゲット以外の人間がいたり、相手が銃で撃とうとするシーンもあるが、そんな時に理由とか規則を考えながら対応していたら大変だな。
標的(ターゲット)は11人―モサド暗殺チームの記録
ジョージ ジョナス 著
新庄 哲夫 訳
新潮文庫
ISBN: 978-4102231012