お殿様といえば普通に男性に決まっていると思うのが当然だが、主人公の南部寧々は女性の遠野領主です。立場としてはお殿様ですね。この史実を元にした時代小説です。
前領主の直政がいきなり暗殺されてしまうところから、隠居するところまで、散発的なエピソードを紹介しながら物語が進んでいきます。その後、寧々は八戸から遠野に追い出されることになりますが、遠野というのは遠野物語で有名なあの遠野ですね、妖怪が出るような土地です。でも実は金が出たので助かった、ていうか争いの種になってしまった、というのが面白い。史実が元になっているようですが、現実は面白いってことだね。
登場人物としては、クノイチの月音と、鷹匠というのは仮の姿で実はスパイみたいな立ち位置の清六、この2人が光っています。特に後半は大活躍ですね。モデルがいるのでしょうか。月音が敵に後をつけられたときに撃退するのですが。
腰刀の下げ緒の先に分銅を結びつけ、赤松の大枝に思いきり放り投げると、分銅は枝に絡み付いた。その瞬発力を利用して、月音は一気に枝の上に跳び上がった。
(p.69)
アニメか映画みたいなシーンを想像しましょう。原理的に本当にこんなことができるのかは知らんけど。
文体は何となく津本陽さんの小説を思い出しました。
遠野女大名
青木慎治 著
小学館文庫
ISBN: 978-4094035513