Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

なぜ闘う男は少年が好きなのか

闘う男というのは歴史に出てくる豪傑のことですね。最初に出てくるのは武田信玄です。タイトルは「少年が好き」なんて婉曲な表現をしてますが、要するに男色のエピソードを気軽に紹介している本です。日本の武将はもちろん、世界中の歴史的な逸話を紹介しています。大学受験で歴史を選択する人は、特に女子高生、これを読むとモチベが上がるかもしれません。

中国の例ですが

捕虜の羌族を去勢すべき日を甲骨で占った殷王は、附属のトーテムをたてまつり、敵に呪いの言葉をはき、遺族の男は殺し尽くし、女は犯し、子供はかたっぱしから去勢する、恐るべき祭祀王でした。
(p.75)

中国四千年の歴史が今も受け継がれているという人がいます、ていうかその通りですが、このような思想も受け継がれているのでしょうか。この逸話は前漢の時代のことのようですが。

国は変わってヨーロッパ。キリスト教は同性愛厳禁というイメージがありますが、イエスの逸話が。

彼と美しい愛弟子ヨハネはただならぬ関係にあり、
(p.108)

マジすか? 宗教に関わってくるととんでもない結果になりそうで怖いですけど。

また、フランスに飛ぶと、おっぱいが綺麗だったジャンヌ・ダルクと共に闘ったジル・ド・レの話は壮絶です。ここに書くと強制削除されそうなのでやめときます。p.119 あたりを読んでください。

日本に戻って、空海。ご存知ですよね、

平仮名から温泉、果ては讃岐うどんまで、何でもかんでも開祖にされてしまう人
(p.146)

その空海が男色だというのですが、古文でも僧侶の男色系の話、たくさんあります。学校の古典の授業でやりましたよね。ちなみに最澄の話もあります。

比叡山には、最澄が初めて登山した際、美しい少年に出会ったという伝承が残っています。
(p.156)

そりゃま、ぶちゃいくな少年少女に出会ったという伝承はあまりないですな。インパクトもいまいちだし。ていうか美的感覚って確か時代で激変するはずですが。

歌舞伎の話で面白かったのは、女性が演じるのは風紀を乱すという理由で禁止令が出る。これも社会の授業で習いましたよね。その結果女形という文化が発展した。現金を売るの禁止したらチャージしたICカード売っちゃえ、みたいなノリです。ところがさらに少年も禁止されてしまう。少年も風紀を乱すというのは、そういう性風俗があるからこそです。このときの「少年」の判定が前髪立ち、ということなのですが、じゃあ前髪剃ればいいよね、というのが野郎歌舞伎。これは私は習った記憶がないです。

「チラチラ見え隠れするのがかえってたまらん」
(p.204)

パンチラ的な? 対応する文献が書いてないですが、巻末にずらずら並んでいる数十冊の参考文献のどれかに出ているのだと思います。

そろそろ疲れてきたので後は省略しますが、世界の通過儀礼とかオスカーワイルドの話とか、とにかく盛りだくさん【なにが】の一冊です。



なぜ闘う男は少年が好きなのか
黒澤はゆま
KKベストセラーズ
ISBN: 978-4584137857