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Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

人質カノン

7つの短編が入っている。本のタイトルになっている「人質カノン」は偶然コンビニで買い物をしているときに強盗が入ってきて人質になってしまうという話。ミステリー的な物語だが、本格的ミステリーのようにヒントが分からないように埋め込まれているのではなく、読めば分かるように書いてあるから気軽に読める。妙に理屈っぽくて落ち着いている子供が面白い。

他には電車で拾った手帳の持ち主を探し出す「過去の手帳」、おじいさんの遺書に書かれた言葉の意味を探り当てる「八月の雪」は短編ながらも読み応えがあった。八月の雪は思わぬ歴史的事件が出てくる。社会を真面目に勉強していてよかった、みたいな。

個人的に興味深かったのは「生者の特権」。飛び降り自殺をしようと13階建てのビルを探している明子が主人公。13階建てってないよね、もしかして実在しないのかな、14階は結構あるけど。死ぬ理由は男に二股かけられて捨てられたから。この明子が夜の小学校に忍び込もうとしている子供と出会って、一緒に校舎の中に不法侵入(笑)することになるのだが、校内でお化けと出会ってびっくりして逃げる。

明子は後を振り返らなかった。死んでも振り返りたくなかった。だって見えたらどうしよう。
(p.254)

ていうか、死にたいんじゃなかったのか。この話はザックリいえば子供と出会ったことで自分の生存意義を再認識するというストーリーだが、そんな単純なことで生きる意欲が生まれるということに驚く。逆にいえば、今の人達はそんなに簡単なことで死のうと決断してしまうということか。なんてモッタイナイ話なんだ。フィクションだからリアルに当てはめるのがおかしいのかもしれないが。解説に書かれている

弱者のエールにあふれた作品
(p.314)

というのがどうしてもピンと来ない。こういうのがジェネレーションギャップというものなのだろう。



人質カノン
宮部みゆき 著
文春文庫
4-16-754904-2