Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

犬とハサミは使いよう

今日はアニメで「犬とハサミは使いよう」。2013年の夏アニメです。リアルで観ていたのですが、最近再度観なおしました。原作のラノベの著者は更伊俊介さん。

転生モノといっていいのでしょうか。主人公の春海和人は、強盗に刺されて死んで、同じ世界の犬に転生してしまうのです。一応転生していますが、同じ世界というのがミソです。

ヒロインの夏野霧姫は、ベストセラー小説家で、秋山忍というペンネーム。ドSという設定です。編集の柊鈴菜がドMで、バランスが取れています。ドMっぷりは、よく表現されていると思いますが、これでいいのかという感じがしないでもないです。

ストーリー的にはミステリー要素があって、誰が犯人か、のようなシナリオに沿って話が進んでいきます。アレっ、というようなどんでん返しもあったりして、それなりに面白いですが、この作品の基本は、イヌとS女性作家のやりとりですね。漫才のような掛け合いがいい感じでハマっています。

キャラとしては、和人の妹の春海円香の異常っぷりが光っています。カレーも美味そうです【謎】。Amazon レビューではクソアニメという評もありますが、個人的にはこのアニメは評価はかなり高いです。いい意味でクソアニメってことでしょうか。

六花の勇者

今日はアニメで「六花の勇者」。原作はラノベで、著者は山形石雄さん。

魔人を倒すために勇者が召喚されますが、6人のはずなのに7人集まってしまう、という「11人いる」的なストーリーです。誰が偽物の勇者かということで、お互い信用できない状態になり、犯人捜しのバトルが始まります。11人と違うのは、協力する暇もなく、すぐにバトルが始まってしまうところです。

バトルのテンポとか、キャラの動きが激しくて、観ていて心地よいです。ただ、個人的には、最初に偽者を想像できてしまったので、ミステリーとしてはいまいちでした。これはキャラの描写をもう少し自然にすればよかったのではないかと思います。

もっとも、ファンタジックな内容が含まれてくるので、その点でも本格ミステリーとするにはちょっと厳しいのではないかと思います。偽者として疑われるアドレット・マイアに対して、ハンスは、アドレットを殺したように思わせて、死ぬ時の表情はウソをつかないからアドレッドは偽者ではないと判断するのですが、説得力があるような、無いような。死ぬ間際でパニクっていたらどうなるのかな、とか。

アニメでは、最終回(第十二話)で、偽者が分かって6人になったところでまた1人勇者が現われて7人に逆戻り、というところで終わっているのが面白いです。

C

今日はアニメで「C」。2011年の春アニメです。

「C」というのは何かというと、よく分かりません(笑)。ストーリーには「C」という現象が出てきます。これは市場閉鎖で、国が本当に消滅します。Close の Cなのかな。

ということで、テーマは金融市場。異世界でディールという金融バトルをします。戦うのはアセットという擬人化された存在。なのでバトルシーンは普通にバトルです。異世界と現実世界がリンクしていて、異世界のマネーが現実世界でも使えることになっています。技とか何のことかよく分かりませんでしたが、キャッシュが足りなくなったので株を売るとか、そういう技が出てきます。

主人公は余賀公麿。苗字はラッキーな人間であるという暗示でしょうか。ツキがあるというのは取引では重要ですね。公麿と一緒に戦うアセットは真朱(ましゅ)。好物がカップ麺というのがお茶目です。

シナリオとして重要なのは、先に紹介したような、異世界のお金が現実世界にも流入している点。これで現実世界の経済に影響を与えてしまいます。もう一つは、ディールで負けたら負けた人の未来が悪化する、というルールです。敗けた人の経営する会社が倒産したり、知人がいなくなる、のような影響がリアルにあるわけです。登場人物で一番ヒドかったのが経済学の講師の江原大介。ディールで負けた結果、子供がいなかったことになってしまいます。しかし本人には、負けるまで子供がいたという記憶が残っている、というのが微妙に釈然としませんが。

最後のシーンで日本の通貨がドルになっているというのは、まあこの流れだとそうなるかな、という感じですが、ビットコインになったりしても面白かったのではないかと思います。

天冥の標VII 新世界ハーブC

今日は天冥の標、Ⅶ。「新世界ハーブC」。

前の章でシェパード号が墜落回避に失敗。結局、惑星セレスに墜落します。乗員が全員死亡したら話が続かないので、何とか生きています。

その後、セレスの地下でアイネイアとミゲラは仲間と合流しますが、冥王班を逃れてそこに避難していたのは、

「男が二四九〇五名、女が二七三三九名。――うち、成人が一〇二九名だ」
(p.57)

未成年、子供の人数が圧倒的に多いのです。この5万人が10の区画で避難生活を始めると、予想通りに予期せぬ出来事が発生しまくります。七区の暴力集団が六区に侵入しているのを鎮圧しに行ったときに、アイネイアが連れて行ったロボットは七区の少年少女を簡単に殺してしまいます。それがミスで済んでしまうような世界観があります。

ごたごたの後に落盤があったり、子供が増えたり、民主的な機構ができたりで、セレスは何とか生き延びて、メニー・メニー・シープは発展していきます。

アニメだと超強い人が独裁的に統治する一方で反社会的勢力とか闇の団体が世界征服を試みるパターンが出てくるところですが、セレスの環境はそれよりも過酷で、より協力しないと全滅してしまうレベルのようです。このあたりは、何となく日本の歴史を見ているようで、和風なSFという感じもします。


天冥の標VII 新世界ハーブC
小川 一水 著
富安健一郎 イラスト
ハヤカワ文庫JA
ISBN: 978-4150311391

京都寺町三条のホームズ

今日はアニメで「京都寺町三条のホームズ」。原作者は望月麻衣さん、ミステリ小説です。

主人公は真城葵。高2のJK。天才的な鑑定眼を持っています。アルバイトに行った先で出会った家頭清貴は京都大学の院生で一流の鑑定士。この二人がいろいろ鑑定しながら謎を解いていく、という感じのストーリーです。推理するのは清貴で、名探偵にちなんでホームズと呼ばれているのですが、自身は「家頭」だからホームズなのだと謙遜しています。

ライバル役として出てくる円生という坊主の贋作師が実にいい感じで悪役キャラになっています。円生とバトルになる時は清貴も結構厳しい顔になって雰囲気も盛り上がります。

舞台は京都なのですが、言葉はアクセントとかあまり京都っぽくありません。円生は割といい感じですが、中途半端な関西弁は関西育ちにはちょっと気になります。アニメだと割り切ってしまえばいいのかもしれません。

背景とかも、少し綺麗すきで、京都っぽさというか、古都っぽさが感じられないのはちょっと気になりました。

天冥の標 6 宿怨

今日は天冥の標、Ⅵ。「宿怨」。この章は PART 1 から 3 まで3分冊になっています。

テーマは《救世群》の世界征服。《救世群》はカルミアンという異星人の技術を使うというチートでセレスを占領しようとします。圧倒的戦力でセレスの防衛艦隊をおおむね殲滅。勝利宣言をしようとしたときに、

「敵艦がいる。すぐ近距離、四百五十キロ」
(PART3, p.215)

これが以前出てきたドロテア・ワット。後は勘のいい人なら想像通りの展開になります。

今回重要なのは、冥王班の治療薬が作れるという話。

カルミアンが来てからもう十年近くたつのに、誰一人、「この病気を治して」と頼むことを思い付かなかった。
(PART1, p.350)

不可能だと思い込んでいたのですね。盲点というべきか。冥王班についておさらいしておくと、

冥王班のウイルスは、病気の症状が収まっても消滅しない。患者の体内で生き続け、周囲の人間へと広まろうとする。その感染性は強く、しかも空気感染する。
(PART1, p.117)

このため、治癒しても、

感染性が強力すぎて、健常者と一緒に生活できなくなる
(PART1, p.117)

ということになります。初期の冥王班の致死率は95%。これは次第に弱化していきますが、感染したら一生隔離するしかない、ということで出来たのが《救世群》なのです。

この章だけでも壮大で、ストーリーの感想を書き始めると果てしないのでそこはスルーして、今回もキャラの個性が独特という点に突っ込んで何人か紹介してみます。まず、アイネイア。

『どんな星も結局みんなブラックホールになる』と言ってしまえば、これはこれで間違いじゃないだろう? でも、あいだをすっ飛ばしすぎだよな。
(PART2、p.194)

イサリに向かって言う言葉です。風桶だけでは分からない、とはいってもスペースオペラみたいな話になってしまうと、間をいちいち説明するのも面倒というか、説明されても分からないんですよね。

次はシグムントの言葉。戦いの勝ち負けはどうやって決まるか。

勝敗そのものを決めるのは、僕は、思いこみだと思う
(PART1, p.227)

負けたと本人が納得しないうちは負けたことにならない、ということですね。

ラゴスの言葉。

モウサが敗れたのは予期せぬタイミングでそれが出動してきたからだ
(PART3, p.257)

ヒルラゴスの会話です。予期できれば事前に対策できる。予期できなかったらどうなるか分からない。ラゴスは医師だけに、何故ということの追求には容赦がないのです。モウサは《救世群》の指導者ですが、急に出てきたソレ(ドロテア)に敗れてしまいます。敗因は予期せぬタイミングというのがラゴスの分析です。

最後に、今回のいい言葉を1つ。

前例のないことは、なんだって最初は失敗する。
(PART3, p.146)


天冥の標 6 宿怨 PART1
小川一水
富安健一郎 イラスト
ハヤカワ文庫JA
ISBN: 978-4150310677

天冥の標 6 宿怨 PART2
ISBN: 978-4150310806

天冥の標 6 宿怨 PART3
ISBN: 978-4150310943

ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note

今日はアニメで「ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note」。2019年の夏アニメです。

ストーリーは Fate / stay night を背景にしたもので、聖杯戦争の話を理解していないと分かりにくいと思います。一応、ミステリのような形式をとっており、主人公のロード・エルメロイII世が名探偵役なのですが、本格ミステリというわけではなく、犯罪に魔法が絡んでくるので、視聴者が推理することはできません。

そのあたり割り切って、Fate のシリーズだと思って見れば面白いです。ロード・エルメロイII世の微妙な暗さとか、スポンサー役ですぐに血を吐くメルヴィン・ウェインズのチャラい性格とか、キャラもなかなか個性的です。

エルメロイII世の弟子で死神の鎌を振り回すグレイも、なかなかカワイイ感じでナイスです。