Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

宵物語

今日は物語シリーズの「宵物語」。この本には第二話と第三話が入っています。第一話は「忍物語」で、そこからリナンバーされているようですね。

第二話「まよいスネイル」はゲストキャラ、紅孔雀ちゃんが行方不明になるところから話が始まります。紅孔雀なんて香港の裏世界で影ボスやっていそうな名前ですが、このお話では小学生女子という設定になっています。その紅孔雀の前歯が郵便受けに入っていたというので、一気に事件ではないのかいう疑いが強まるのですが、阿良々木君の言うには。

「小学五年生のことなら、よく知っているさ。ちょうど生え替わる頃だろう?」
(p.45)

歯が生え替わるというのですが、そんな遅かったですかね? いや、私自身は、何歳で歯が抜けたなんてよく覚えてないのですが。ちなみに小学五年生をよく知っているというのは、八九寺真宵のことを言っているのだと思われますが。

探偵役を演じるのは主役の暦と、幼女の吸血鬼と幼女の神様と幼女の付喪神です。幼女じゃなくて童女でしたっけ。行方不明の紅孔雀のお姉さんは暦と同じ大学の同級生で、食堂でバッタリと出会う、じゃなくて相手からアタックしてきます。

「ここ、空いてますです?」
(p.116)

「ますです」とは奇天烈な表現ですが、そういえば昔「ですます」調で文章を書こうとしたことがありました。今日はお金がないので昼は水だけですます。夜はインスタントラーメンですます。寒いけど電気代がもったいないので暖房を使わずに布団を重ねることですます。

だんだん済まなくなっていきます。本編で「ますです」と言った女性は紅口雲雀と名乗って、

阿良々木暦さんですますよね?」
自分は呼び捨てでいいと言いながら、ですます調で。
(pp.118-119)

ますです調だけでなく、ですます調も使いこなせるようです。

この話の最後の方で、昔に戻りたいということはあるか、という話題が出てきます。ちなみに、阿良々木くんはあんなにヒドい目にあったのに、高校生の頃に戻りたい気持ちがないわけではないと言います。

つらいことはいっぱいあったとわかっていながらもそう感じてしまうのは、人は、未来に希望を持つように、過去にも希望を持ちたいから。
(p.207)

美化しても過去は変えられないんですけどね。美しい思い出だけ残れば戻ってみたくもなるものです。本当に戻ったらとんでもない時代だったことに気付いたりするかもしれません。

第三話は「まよいスネイク」。短編です。主役は撫子で、神様になった八九寺に正式に引き継ぎの儀式をする、という話です。ミッションは夜明けまでに89匹の白蛇を集めて八九寺に渡す、というのですが。撫子は蛇取り名人なんです。蛇なんて都会ではそう簡単には見られませんけどね。私の田舎だとマムシがいますね。

八九寺はこんなことを言います。

私は阿良々木さんの友達ですので、阿良々木さんには厳しいんですよ
(p.238)

噛み付きますからね。

宵物語
西尾 維新 著
VOFAN
講談社BOX
ISBN: 978-4065119921

巫女さん入門 初級編

今日は何か書こうかと思ったのですが見事にヤラれて時間がなくなりましたね。毎日何か書評にするというのは難しいものです。ちなみに今月は毎日書いてみるかと思っていた某ブログは1日目に書けなくて挫折しています。

しかし1日坊主というのも癪なので、先日ちらっと名前を出した「巫女さん入門」を。この本は神田明神監修となっており、そのため、神田明神にまつわる話も出てきます。例えば、神田明神に祀られている神様は、

一柱目は「だいこく様」、二柱目は「えびす様」、そして三柱目は「まさかど様」です。
(p.20)

まさかど様というのは平将門様。それは人間ではないか、と思われるかもしれませんが、

神道では、神様が日本人を「作った」のではなく、次々と「産んでいった」と考えます。そういうつながりがあるため、人を神に祀っても不自然ではないのです。
(p.23)

なるほど、最近は YouTube で人気が出ると神になれるらしいですが、神の子なのでそれは不思議ではないという理論があるわけですね。

神道の特色は4つに要約されて出てきます。「敬神崇祖」「浄明正直」「自然との共生」「言挙げせじ」です。最後のが難しそうですが、

合理ではなく、美しい心で素直に直感的に受け入れることを「言挙げせじ」というのです。
(p.59)

直感的というと禅の世界がそれに近いと思われる方もいそうですが、私見としては、禅というのは言外の理を求める世界であって、直感とはまた別のロジカルな世界だと思っています。あくまで禅は合理なので、神道が合理ではないというのなら、そこが大きな違いだと思います。

本の後半には、大祓詞(おおはらえことば)が紹介されています。

この祝詞を読むことによって、みなさんの心が鎮まって、清まっていきます。
(p.107)

お経みたいな感じですね。ただし結構長いです。毎日3回読むのは大変そうです。

さらに後には作法の話が紹介されています。巫女さんは御神前に近づいたら三分の一歩ずつしか歩いてはいけないとか、お辞儀するときの角度とか。

最後には巫女さんへのアンケートとインタビューがありますが、意外と体力勝負、という意見がありますが、実際、大抵の仕事はそうでしょう。プログラマーだってそうなのです。

 

巫女さん入門 初級編
神田明神 監修, 監修
朝日新聞出版
ISBN: 978-4022504579

復員殺人事件

今日は坂口安吾さんの「復員殺人事件」。この推理小説は途中で絶筆となっており、後半を高木彬光さんが繋いで完結となっています。文庫本巻末には、江戸川乱歩さんの「序」と、高木彬光さんの「あとがき」が掲載されており、ちょっとした裏話が出てきます。

作品は純粋な本格推理小説です。舞台は倉田家。ここで殺人事件が起きます。復員殺人事件というタイトルは、最初に殺された安彦が倉田家から出征して戻って来た復員兵なので。

時代は、

終戦の年から二度目の八月十五日を迎え、やがて秋風の立つ季節になった。
(p.7)

という頃です。しかし、途中で何度かまだ起こっていない事件の話とか出てくるところが脱力できて面白い。

登場人物で面白いのは巨勢博士。この人が探偵役です。警察側は大矢警部。コツコツ地道に調査するのが得意です。警部はこんなことを言います。

あらゆるムダ骨を克服することによって、われわれは真理に近づくことができるのだ
(p.102)

なかなかの名言です。

さすがに腕一本でたたきあげた人物はうまいことをいう。あらゆる専門家には、共通した職業のコツがある。芸術の世界でも、ピカドンの世界でも、変りはない。あらゆるムダ骨に負けず、ということである。
(p.102)

一見無駄のように見える単純作業の繰り返しが職人芸を作るのです。これに比べると博士は何か軽いですね。

安彦は戦争に行く前に、妹の美津子に日記を手渡します。この時、聖書の話が出てきます。

包み紙の表紙に、マルコ伝第八章二十四と大きな字でハッキリ書いてあったというのです。マルコ伝第八章二十四と申しますのが、つまり、人を見る、それは樹の如きものの歩くが見ゆ、という文句なんですがね。そこで犯人を見た、という謎じゃないかというわけなんですが
(p.29)

包み紙というのが、日記を包んだ紙なのですが、復員殺人事件に福音書が出てくるというのも面白い。

もう一つ興味深いと思ったのが、食欲の話です。

この話、安彦は復員してすぐに家に戻ってこないで、しばらく熱海でうろちょろした挙句に家に帰って来た。それはニセモノの証拠だというのです。安彦が本物なら、家の食事に魅かれてすぐに帰宅するか、あるいは嫌なら二度と帰ってこないか、どちらかだろうと。そのスグに帰宅する理由は、倉田家のグルメな食事を食べたいから、というのです。

戦後まもなくの食糧難の時代ですから、食べるものに執着する度合いも今とはまるで違うのでしょう。食べたいという欲求は強烈なもののようで、

そして、人生の計算も、帰するところは、生死を本としての損得勘定だ。限られた時間内に於ては、恋愛の情熱が死や食慾を越えてもっと強烈なこともあるが、これは時間的な問題だ。
(p.167)

とかいう。「生死を本」というのが、今の日本のような生きるのが当たり前の世界ではピンと来ないのではないか。

博士と警部の関係は極めて良好ですが、倉田家のメンツはドロドロの人間関係で、宗教も混ざってヤヤコシさに輪をかけた状態のところで、プロボクサーで犯人だと疑われている定夫がフグに当たって死んでしまいます。しかも、ここまで書いたところで坂口安吾さんが亡くなってしまった。というようなお話です。

そこから始まる後半の謎解きが流石ですが、本人が最後まで書いたらどうなったのか、もはや神のみぞ知る世界です。

 

復員殺人事件
坂口 安吾
河出文庫
ISBN: 978-4309417028

忍物語

今日で8%も終わり【謎】ですね。スタバでちょっと飲んでから外に出る私は軽減税率が適用されるのかどうか、未だに解決していません。とりあえず「お持ち帰りですか」と言われたらハイと答えておいて店内で飲むみたいな裏技はアリなんですか。スイカで駅に入場して、ちょっと忘れ物したので出ます、的な。※

今日は「忍物語」です。ミイラ取りがミイラになる感じの吸血鬼バトルです。臥煙さんのボケっぷりも2%パワーアップしています。

私は嘘とツインテイルは結ったことがない
(p.24)

私もナイですね。嘘じゃなくてツインテイルの方です。ポニーテールとか三つ編みはあるような気がします。で、ミイラ化事件の舞台になるのは直江津高校の女子バスケ部。神原が引退したあのクラブです。全国を狙う部活はハードなのです。

高すぎる目標、ハードなトレーニング、逃れられない同調圧力……。
(p.60)

どこにでもありそうな話ですが、最近はちょっとハードなことをするとパワハラとかになるのでしょうか。退部したくても退部できないというのはキツそうです。その女子バスケ部で5人が行方不明になってしまうというのが、今回のお話です。

さらにスペシャルゲストのミイラが増えます。このミイラは忍を吸血鬼化した親的な存在で、名前はDVS。デストピアヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター。名前通り、自殺のプロです。それが今回はミイラになってしまったのですが、後で復活させられたときにこんなことを言います。

どうやら、また死んでしまったらしい
(p.198)

流石です。しかし情けない姿になったマスターを見たときに、忍が嘆きます。

神よ、いったい今、この町で何が起こっておるのじゃ?
(p.92)

吸血鬼の神頼みというのも謎増ですが、ここで神というのは八九寺のことなんですが、既にこの段階で舞台は幼女漫画化しています。まどマギみたいな感じ。

さて、死を恐れない阿良々木くんは、また殺されて(笑)地獄から特効薬を持って帰ってこい、という無茶ぶりをされますが、これがなぜか死んだら地獄ではなく天国に行ってしまうのです。天国では

そこにいたのが裸の美女だったことにも、僕は取り乱さなかった。
(p.100)

流石は天国です。顔が見えてなくても美女なんだそうですが、顔を見ると石になるのかもしれません。

この後(といってもかなり端折っていますが)、女子バスケ部はパジャマパーティを開催し、阿良々木くんはそこに女装で参加する羽目になるのですが、その前に臥煙さんが女子高生の携帯を見て

あんなどろどろした人間関係を見せられれば、もう吸血鬼なんて怖くもなんともないな
(p.171)

神様はじめました」でも女子がどろどろした感じのシーンがあったような気がしますが、それどころではなさそうですね。そのどろどろがパジャマパーティなんかやったらどうなるのかと思いますが、神原の自己紹介。

「そして私が神原駿河! 阿良々木先輩のエロ奴隷、好きなプレイは放置プレイだ!」
(p.246)

戦場ヶ原先輩にとことん放置されたので癖になったのでしょうか。Mも混ざっているようにしか見えないですが。何かまとまらないのでもうやめます。

 

忍物語
講談社BOX
西尾 維新 著
VOFAN
ISBN: 978-4062839020

 

※乗車目的でない場合は入場料を払わなければならない。この場合、乗車目的で入場しているのだが、急用ができたので乗車せずに駅から出たことになる。

雑記

今日はプログラムと格闘していました。そろそろ夏アニメの季節も終わりですが、秋アニメの準備を何もしていないです。大丈夫でしょうか【なにが】。

ところで、一冊、図書館から本を借りてきました。

特に深い意味はありません。初級編というので、上級編があるのかな、と思ったのですが見当たらないですね。

 

巫女さん入門 初級編
神田明神 監修, 監修
朝日新聞出版
ISBN: 978-4022504579

愚物語

もうそろそろちゃんと書いておかないと忘れてしまいそうなので、愚物語、いきます。昨日は愚者語だとコメントしましたが、まあそういう話で間違いないです。

1話目は「そだちフィアスコ」、老倉育メインの話です。

私にも、そんな風に変わるチャンスがあったのだろうか? ならば私は何回、それを逃してきたのかな。
(p.32)

そんな風というのは、阿良々木が戦場ヶ原を変えたというのですが、ひたぎさんって本当に変わったのですかね。重みは増したようですが。

ストーリーはだいたい昨日紹介したので合っているはずなので省略します。4桁の数字のパスワードを一瞬でクリアするのは流石ですが、ヒントがあれば案外簡単なのかもしれませんね。ちなみに私のスマホはアレにしてあります。

2作目は「するがボーンヘッド」、神原駿河メインの話です。サブで忍野扇がちょっかいを出します。猿の手も出てきます。なぜ今頃?

自分が発見したと思ったのが実は既に発見されていたというのが、

「ああ、それなら『車輪の再発明』ですね」
(p.216)

車輪の再発明は、プログラマーの世界ではよく使われる言い回しですね。そろそろ新しい機能を持った車輪が発明されてもいいような気もしますけどね。この作品は神原のボケが今まで通り光っています。

3作目は「つきひアンドゥ」、阿良々木月火メインです。ドタバタ話です。サブは斧乃木余接。月火ちゃんが容赦なく攻めるタイプなので、死体の斧乃木ちゃんも生きた心地がしません。斧乃木ちゃんは人形のふりをしていましたが生きた死体であることがバレてしまったので魔法少女のふりをして誤魔化そうとします。撫子ちゃんも登場します。今回は全員ちゃん付けです。斧乃木ちゃんは撫子ちゃんに蛞蝓(なめくじ)の絵を描くように依頼するのですが、

「い、いや、結構難しいよ? つるんとしているから難しいよ?」
(p.260)

ナメゴンみたいな感じ? この後、本当にナメゴンみたいなのが出現して大騒ぎになります。最後は八九寺真宵ちゃんまで出てきて事態を収拾します。撫子ちゃんの次のセリフはなかなか意味深でした。

「世の中が甘くないことが、とても嬉しい」
(p.263)

シリーズを無視してこの一冊を最初に手にした人には何の話かさっぱり分からない一冊です。

愚物語
西尾 維新 著
VOFAN
講談社BOX
ISBN: 978-4062838894

雑記

今日はまあヘロヘロというか、朝は風邪っぽくて風邪薬とか飲んでいましたが、既に回復しています。どうも私は蕎麦を食べると体調が回復するようです。

愚物語はサクっとまとめてしまいたいのですが、いきなり最初の話がややこしいですよね。でもないのか。とりあえず概要としては、

AとBは幼馴染

AとCは敵対関係

BとCが結託してAをハメた

Aが孤立して不登校になる

こんな感じなんだけど、Aは別にそれを気にしているような感じでもなく、どちらかというとややこしい奴らの相手をしなくていいから気楽みたいにも見える。私が一人平気派だからそういう解釈になってしまうのか。

この話、最後はツキがない系の老倉育が余計なことをして仲直りさせてしまう、みたいな話でまとめていいんですかね。確かあと半年で卒業みたいな設定だったから、無理して登校しなくても、という状況みたいな気もするし。

この本、愚物語というタイトルですが、実は愚者語なんですね。