Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

雑記

今日はちょっとプログラムに時間を取られつつ、「得手に帆あげて」をまとめていましたが、時間切れなので、ちょっと小ネタ的なものを。テレビ番組で外国が侵略してきたらどうするという質問があって、若い人が「無抵抗主義」とか「逃げる」と答えたという話で、これに本田さんが怒ります。

侵略を前にした無抵抗主義が、どれほど悲しくて辛いものか、知っているのだろうか。人間性も、民族の誇りも、そして生命さえも踏みにじられるのだ。
無条件降伏後の日本兵と、日本人居留民が、かつての満州で、どんなに非道な仕打ちを受けたか、知らないでは済まされない。これだって、無抵抗で受けたものだ。
武力侵略に対して「無抵抗主義」というのは、簡単にいえば「生きる権利」を捨てることと同じである。
(得手に帆あげて、本田宗一郎著、p.230)

このあたりの感覚は、戦争を知らないからで済まされることではないと思います。無抵抗主義というのが、殺されてもいいという意味で言っているのなら、いい覚悟だと思うわけですが、おそらくテレビ番組で「無抵抗主義」と答えた人は、抵抗しなければ殺されないとか、何か甘い妄想をしているのでしょうかね。

 

得手に帆あげて (1)

今日は本田宗一郎さんの『得手に帆あげて』を読破しました。この本はいろんな意味で面白いです。

いきなりこういう話がサラっと出てきます。

それまでの人生は、人並み以上に遊んだかわりに、三日や四日は寝ずに働いた。
(p.20)

サラッと三日や四日というのですが、こういうのは昔はどこでもあった話でしょう。ていうか本田さんよりかなり後の世代のはずの私だって、そういう経験があります。スティーブ・ジョブズさんも喜んで働けとか言ってたはずですが、そういう事を今の日本で言ったらパワハラだの何だのと言われて炎上しそうです。

ただ、ここで感じ取って欲しいのは、新しいモノを開発する現場には、効率とか健康とかを超えた所に何かがあるということです。

先日テレビで見たのですが、

床に落ちていたクロスねじをこっそり拾ってきた
(p.35)

日本にプラスねじを広めたのは本田さんらしいです。プラスねじを使うことで大量生産を効率的に実現できるようになるという仕組みです。その最初のねじは要するにパクってきたわけです。技を盗むという言葉もあります。そもそも人間が成長していく過程そのものが真似の積み重ねで、その上に創造力が生まれてくるのです。

ただ、本田さんは勉強を心底嫌いだったらしくて、そのあたりのズレというかギャップが、個人的にはすごく残念な気がします。確かに本田さんは、ろくに学校にも行かずに優れた製品を作り出しました。しかし、もし本気で学校に行ってたら、どれだけモノスゴイものができたかと思うと、やはりモッタイナイと思うのです。

学者っていうのは、幼稚園の園児みたいなもんだ。あたりまえのことを、どうして? どうしてって聞くんだ。
(p.39)

reason は「学」において最も重要なことです。そこが本田さんの感覚とはちょっとズレていたのかもしれません。

(つづく)

 

得手に帆あげて
本田 宗一郎 著
知的生きかた文庫
三笠書房
ISBN: 978-4837900658

 

雑記

今日はコーラン(中)を読み始めました。(中)は11、フードから始まります。次のユースフとともに、聖書に出てくる有名な話なので、読みやすかったです。

聖書にも「わざわいがきますぞ」と脅すようなシーンは何度も出てきますが、神様が怒ると恐ろしいことが起るのです。不穏な世界情勢をみるに、もしかして今もお怒りなのでしょうか。

 

ウィンター家の少女

小出しで読みながら紹介していたが、読破しているので紹介する。キャロル・オコンネルさんのウィンター家の少女。天才ハッカーの女性警官、マロリーが主人公。

ウィンター家で殺人事件が起こる。被害者は保釈中の連続殺人犯でナイフ使いだ。しかし死体の横にはナイフではなくアイスピックが落ちていた。いかにも不自然な現場である。死体の足のホルスターにはナイフが入ったままだ。つまり、この殺人犯は誰かを殺しにウィンター家に忍び込んで返り討ちにあったとマロリーは考える。殺人犯が死んでも困ることはない。むしろ社会のためにはいいかもしれない。しかし、この殺人犯がウィンター家の誰かを殺すために雇われたのなら話は別だ。

あなたが死んで得するのは誰です?
(p.61)

あなたというのはネッダ・ウィンター。この時点で70歳の老婆だ。

ウィンター家は昔、大虐殺事件があった。手口は、

心臓へのひと突きのみ。九人の被害者全員がそうよ
(p.156)

アイスピックで心臓を刺して殺したというのである。未解決事件で犯人は捕まっていない。今回の死体にはハサミで突かれた跡があったが、検査の結果、アイスピックで刺されたのが死因だと分かる。ということは大虐殺事件と同じ犯人が被害者を刺したという可能性が出てくる。、マロリーはそれがネッダではないかと疑っている。

その後は上からの圧力とか弁護士との駆け引きとかいろいろややこしいゴタゴタをやり過ごしながら真相に迫っていくのだが、解決前にネッダは死んでしまう。ネッダが繰り返して書いたという、

狂った人間は正気の人間を狂わせる。
(p.232)

この言葉がリアルに思われる。確かに狂気は伝染するものなのだ。

私はマロリーのシリーズは読んだことがないので、この作品が初めてだった。天才ハッカーということなのだが、この作品だけ読んだ印象にそれはなくて、どちらかというとダーティーハリーのような力技で片付けるような印象を持ってしまった。本作が面白かったので、あと何作か読んでみるつもりである。

最後に、この作品で印象に残った言葉を一つ。

占い師が正直なわけないじゃないか。
(p.223)

 

ウィンター家の少女
キャロル・オコンネル 著
務台 夏子 翻訳
創元推理文庫
ISBN: 978-4488195151

雑記

今日は体調最悪でもう寝てしまおうと思っている位なので書くこともないです。帰りの電車の中では本田宗一郎さんの「得手に帆あげて」を読んでいました。途中で寝てしまいました、ていうか意識が飛んだような気がします。

いいことも沢山ありますが、勉強不足で誤解しているようなことがあるような気がします。子供の頃は全然勉強しなかった、それがホンダの原動力になった、というのが定説だと思いますが、この人が本気で勉強していたらどんなモノスゴイことができたのかと想像してみるのも一興ではないでしょうか。

雑記

今日はちょっとデリダの本を読みました。朝からトラブルがあって、どうもスッキリしない連休最後の日になったのですが、こういう時はデリダを読めば脳内が脱構築されることでスッキリしたような錯覚に陥ることができます。

話変わって、とあるブログに書いた投稿を、移転するつもりで他のサーバーに移動作業中なのですが、どうも書いた記憶がないような小話とか出てきて、これもスッキリしない反面、読んでいて面白いです。

 

この世にたやすい仕事はない (2)

今日は「この世にたやすい仕事はない」を読破しました。読み終わってみて考えてみるに、これは仕事というのは全部繋がっている、辞めた仕事も人脈が出来ていて未来を左右している、のような壮大なテーマがありそうな気がしてきました。

「私」はいろんな仕事をするわけですが、それは「私」を成長させていきます。例えば第3話の「おかきの袋のしごと」では、

あれがだめならこれ、というメンタルはちゃくちゃくと育てていた。
(p.186)

ということで打たれ強くなっています。さらには、

『ふじこさん』の仕事をするようになってから、自分はつくづく相談されるのが下手だし、何も知らないのだな、と思うようになった。
(p.206)

何というか、悟りましたね。ちなみに、ふじこさんというのは、

丸みを帯びた三角形で、粉チーズの絡んだごく小さいあられと海苔を振りかけた、やや薄いしょうゆ味のおせんべい
(p.190)

ということなので、おにぎりせんべいみたいな感じでしょうか。

第4話「路地を訪ねるしごと」では

あいにく私は、前の前の前の前の職場で、人間の心の隙間にそっと忍び込んで、ぷすぷすと針で穴を開けていくような人々に何人か接している。
(p.265)

何事も経験しないと成長しないわけですね。

第4話は、ちょっと宗教っぽいというか詐欺っぽいというか、怪しい団体と密かに本気で戦ってしまうようなシナリオなのですが、どんな仕事にも裏がある、ということが本当はメインテーマなのかもしれません。事務所の盛永さんは「私」にこんなことを言います。

「あなたがそんなに一所懸命になることはないんですよ」
(p.276)

仕事に一所懸命になることは悪くはないと思うのですが。たかが短期の派遣社員が本気になるのも、社員としてはいろいろやりにくいのかもしれません。

第5話の「大きな森の小屋での簡単なしごと」は、仕事としては簡単なのですが、それで病んでしまう人もいるという恐ろしい仕事なのです。最後は花粉症に負けるという驚きのオチなのですが、とりあえず、その森に無断で住み着いた人がいて話がややこしくなります。そのような人がいなかったらどうなるんでしょうね。平穏無事すぎて。その無断で住み着いていた人の談。

自分が食べるためだけに一日中行動し、眠るという生活は、安らかでそんなに悪くはないけれども、物足りなくもあるんだな、と思うようになった
(p.422)

日々是好日、というわけにはいかないようですね。

最後に、ちょっとコレはどうなの、というのがあったので紹介します。仕事先で酷い目に遭った人の談です。

「親に言っても、なんで辞めたんだ、続けられないのはおかしい、としか言わないし、面接で、なんで前の仕事を辞めたんですかって訊かれて、上司から毎日怒鳴られてたからって答えるわけにもいかないし、何て言ったらって考えてて口ごもったら案の定落とされるし……」
(p.300)

んなの私だって速攻で落とすよ。

 

この世にたやすい仕事はない
津村 記久子 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101201429