Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

神様のスイッチ

今日紹介するのは藤石波矢さんの「神様のスイッチ」。アクションというかバイオレンス?

ヤクザの抗争に警察が絡んできて大変なドンパチ騒ぎになるのですが、登場人物ごとに視点がどんどん切り替わる構成で、非常にテンポ良く話が進んでいって、ハッと気付いたら終わっていた、みたいな。

ストーリーは今回おいといて、バックグラウンドが東京なので近所感があったので、そこに注目してみます。といいつつ最初はスタバの話。私はスタバによく行く派なのです。今日も2店行ってますが、コーヒーがどうというより、パソコンを使いながら、スタバに集う人の話をこっそり盗み聞きするのが趣味なのです。いろいろ面白い人が多いのです。

ところで、スタバというと注文が難しいという伝説もありますが、

和寿が「ホットコーヒー」と言った時は拍子抜けした。
(p.11)

そういえば私はホットコーヒーと言って頼んだ記憶がありません。いつもは「ドリップのトール」なのです。これだとホットかアイスか問われることがあるのですが、ホットコーヒーと注文したらドリップのホットに決まっているからその方が情報量が多いわけです。試しに一度「ホットコーヒー」と言ってみましたが、ちゃんと想定通りのものが出てきました。

てなわけで東京巡りになります。

浜松町駅から徒歩五分。メニューの豊富さが売りの居酒屋『腹くちい』は、
(p.33)

浜松町は実はかなり詳しいのです…と言いたいところですが、案外広いので、狭い範囲の知っているところしか知りません。ちなみに、先日の日曜には浜松町の吉野家で牛丼を食べました。日曜夜だと客が全然いない、ていうか私の他に1人しかいませんでした。24時間営業です。ちなみに平日昼は混雑しているはずです。

『腹くちい』を出て大門駅に向かいながら
(p.115)

浜松町と大門は、地理的にほぼ同じ場所です。浜松町はJR、大門は都営地下鉄浅草線大江戸線が交錯しています。

東京モノレール浜松町駅北口前に、喫煙所がある。
(p.133)

羽田空港に出るにはJRならモノレール、浅草線京急と直結しているので便利な場所なのですが、

大江戸線大門駅の入り口近く、屋外に設置された喫煙所で
(p.124)

はて、どこですかね? A6出口の方でしたっけ。ちなみに大江戸線大門駅は最近、といっても半年ほど経っているかもしれませんが、日本生命浜松町クレアタワーというビルが完成して出入口が1つ増えています。屋外のエスカレーターが特徴です。

大門を離れて、次は高田馬場へ。

高田馬場で美味しいパン屋を見つけたんです」
(p.76)

馬場は学生の頃は結構行きましたけど、とはいってもゲーセン位しか知らないですけど、その後は殆ど行ったことがないと思います。目白に一時期住んでいたので、それなりに土地勘はあるのです。

二駅で中井駅に到着した。
(p.109)

高田馬場からは西武新宿線で2駅目。ちなみに間の駅は下落合です。私はさらに1つ先の新井薬師駅に、昔、割とよく行ったことがあったので、このあたりも何となく分かります。ただ、ここも最近はあまり行きません。二十年ほど前でしょうか。

春日井くんの家って、光が丘じゃない
(p.125)

光が丘は大江戸線の終点の駅。

光が丘。ショッピングモールも公共施設も充実していて、住むには不便のない街だ。
(p.282)

高層マンションが林立していて、抗争話にはもってこい…というわけではないですけど。広い公園もあって、桜の季節は賑やかになります。この本には「住民の高齢化が進んでいる」と書いてありますが、どうも妙に詳しいですね。確かにドトールとか入るとお年寄りが多いことに気付きます。ただ、比較的早い時間に閉店する店が多かったと思います。

電車は国立競技場駅に停車し
(p.138)

これも大江戸線の駅です。サッカーなどの試合がある日には超絶大混雑します。

ハッと目が覚めたのは、練馬駅に電車が停まる瞬間だった。降りるべき中井駅は三つ手前だ。
(p.181)

寝過ごしちゃいましたね。大江戸線に乗ると分かりますが、寝ている人は異様に多いです。リニアモーターの磁気が人間を眠らせているような気がします。練馬駅は降りる人が多いので、人の動きで目が覚めたりします。とはいえ最近は寝ないでスマホを使っている人がとても増えました。中井からは、落合南長崎新江古田、その次か練馬です。ちなみに「江古田」と「新江古田」を正しく発音できるのは地元の人か鉄道マニアです。

次は車の移動ですが、こんな感じ。

緊急通報が入ったのは、南千住から上野に引き返し、谷根千方面に流そうとしていた時だった。
(p.188)
GPSで追跡したトラックは四谷方面に走行する。
(p.200)
池袋駅近く、明治通りを走行中に
(p.229)

池袋は先日の暴走車のニュースでまた有名になりましたが、何か呪われた街のような気がします。以前も暴走車が歩道に乗り上げて事故っているし、その前は無差別殺人事件がありました。デュラララ!!の聖地にもなっていますが。

新大久保にある焼肉店のホールで
(p.249)

言わずと知れたコリアンタウンです。焼肉系の店が多いとの噂ですが、私は新宿拠点なのですが、新大久保には十年以上行ったことがないと思います。

秋葉原駅浅草橋駅の中間地点、神田川の岸に沿うように
(p.254)

秋葉原も最近行ってないですね。最後に行ったのはまさかのメイドバーかもしれません。行くと浦島太郎になりそうな気がします。

ちょっと気になったのが、ここ。

〈実はみらべるで材料買ってました〉
みらべるはうちの近所にあるスーパーだ。
(p.182)

みらべるって、いくら何でもローカルすぎるネタのような気がしますが、中井にあるスーパーです。東京に約10店舗展開しているようです。雰囲気的には少しアットホーム的な、昔ながらのスーパーといったところでしょうか。気になる人はググってみてください。

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みらべる

最後にいい言葉を一つ紹介します。

「八方美人というのは楽じゃないだろ。一方に美人でいるだけでも大変なのに、君はすごいよ」
(p.59)

確かに(笑)。個人的には特定の方向だけ向いているというのは、それだけにキツいという感じもしますけどね。

 

神様のスイッチ
藤石 波矢 著
講談社タイガ
ISBN: 978-4065143087

彼女たちはみな若くして死んだ

今日は先日チラっと紹介している本で「彼女たちはみな若くして死んだ」、原題は THEY ALL DIED YOUNG で、これは英語の題名の方がインパクトとか恐怖感があるような気がします。

事実は小説より奇なりといいますが、この本は実際にあった犯罪を集めたものです。しかし報道記事ではなく、ストーリー的に徐々に謎が解かれて行くような構成になっていて、リアルなミステリーといった感じでハマってしまいます。

2つ目の「ランベスの毒殺魔」に、こんな話が出てきます。

彼らはクリームがスティーブンソンが最近上梓した作品『ジキルとハイド』に触発されて、ジキルの分裂した自我が創りあげたハイドの模倣をしたのだとかまびすしく騒ぎたて、その本をはじめ、犯罪関連のたぐいの読み物はすべて出版禁止にすべきだと主張した
(p.73)

この事件は犯人が作品上映前から大量殺人を行っていたため、この仮説は否定されたのですが、何か事件があるとほにゃららが原因だとこじつける人が必ず現れますね。もちろん想像するのは自由ですが、実際に行動に移すのならその前に科学的な検証をして欲しいものです。

10編の作品は殆ど悲惨な殺人事件なのですが、異色なのが「彼女が生きているかぎり」。信託財産を管理している弁護士が、毎年小切手を送付する相手のヴェロニカが死んでいるのではないかと疑いを持ちます。面会を要求すると、ヴェロニカはカタレプシー(強硬症)で、会える状態ではないと拒絶されます。それでも強引に面会を強行するのですが、

ベッドに横たわっているのは、長い金髪の美しい女性だ。顔が赤い。高熱のせいなのか、異様に赤い。女性は目を閉じて、みじろぎもせずに横たわっている。
(p.250)

ということで本人確認ができてしまったので、弁護士は小切手を送ろうとしますが、探偵は面会した医師が電話帳に載っていないことを突き止め、やはりこれは詐欺であると確信するのです。一体どんなトリックかは伏せておきましょう。

あと、殆ど関係ないですが、ここはマークしてあったので。

このチェックは何週間もかかったが、それと平行して
(p.273)

並行ですかね。集中して読んでいるとこういう所が気になってしまいます。新しい冊では修正されているかもしれません。

 

彼女たちはみな、若くして死んだ
創元推理文庫
チャールズ・ボズウェル 著
山田 順子 翻訳
ISBN: 978-4488170028

雑記

今日は昨日みたいにグダグダで済むような感じではなかったので圧倒的にパスです。ただ、昨日の本は少し読みました。あの女刑事、何でトゲトゲしているのかまだ理解できません。ミステリーというより若干ホラーな感じがしないでもないです。

漫画週刊誌のモーニングも買いました。モーニングというと全然関係ない話ですが、喫茶店などのモーニングセット、昔はたまにサービスを満喫したものですが、ここ数年は使ったことがありません。新宿を朝に歩いていると、牛丼、カレー、うどん、など、いろんなモーニングセットがあるようですが、何かすごく美味そうな気がしてしょうがないのです。食べたわけではありませんが、味覚なんて結局大脳がどう感じるかです。美味いと思い込んで食べたら美味いに決まっているのです。

「ウインター家の少女」では、ちょうどクロワッサンを味気なく腹に詰め込むようなシーンがあったような気がしますが、そのような食べ方でも何か美味そうな気がしてくるものです。

 

少女パレアナ

最近何冊か読んだ本があるので、そろそろ紹介しないとブログの読者(いるのか?)が離れていってしまうので、という感じで紹介します。今日は「少女パレアナ」。

エレナ・ポーターさんの作品で、発表されたのは1913年。100年以上前のことです。この作品は発表された当時から大好評だったといいます。日本では「愛少女ポリアンナ物語」というタイトルでアニメ化されています。

パレアナは11歳。母が死に、牧師の父が死んで孤児になってしまい、母の妹であるミス・バレーのところに引き取られます。

この物語の根幹にあるのが、パレアナの遊びです。

ゲームはね、何でも喜ぶことなのよ。喜ぶことをなんの中からでもさがすのよ。
(p.42)

このゲームのきっかけは、

あたしがね、お人形を欲しがったもんで、お父さんが教会本部へ頼んでくだすったんですけどね、お人形がこないで松葉杖がきちゃったの。
(p.42)

何で松葉杖? 理解を超えた謎の世界なのですが、普通、子供ならそれは悲しいことでしょう。ところが、松葉杖をみた牧師さんは、パレアナが杖を使わなくてもすむのが嬉しいことだ、と喜んでみせます。これはキリスト教的な考え方だと思います。パレアナが後に悩んでいる牧師さんと会話するシーンがあります。

お父さんは、うれしいといつでも言ってましたけど、たいていそのあとで、聖書に喜びの句がなかったら、一分だって牧師なんてしていられないって言いました
(p.195)

聖書には喜びなさいという表現が800回も出てくるというのです。悩んでいる牧師さんは、次の説教で信者たちにガツンと厳しいことを言おうと考えていたのですが、これで気がかわります。

絶えず相手の欠点を責めるかわりに長所をあげて誉めるのがよい。悪い習慣の型にはまり込んでいるのを手を貸して引っ張りあげるのだ。
(p.198)

このように、パレアナが他の人と話す度に、気難しい、偏屈な人達が、明るく優しい人に変わっていきます。何をされても文句を言うスノー夫人。誰とも話をしない大富豪のジョン・ベルデントン。パレアナは意識せずにそれをやってしまうのが面白いところです。例えばミス・バレーはパレアナに何度も罰を与えるのですが、その都度パレアナは喜んでいるので、何をやっているのか分からなくなってしまうのです。

パレアナが孤児のジミーを誰かに引き取ってもらおうと尽力するシーンがあります。しかし、誰も助けてくれません。教会の婦人会に助けを求めるのですが、婦人会は身近にいる孤児ではなく、インドに寄付金を使ってしまいます。

無理もないさ。知らないもののほうが知ってるものよりよく思えるのさ。取れないところにある芋か一番大きく見えるのとおんなじさ。
(p.119)

ジミーも最初は超絶暗いキャラでしたが、パレアナの影響でさばさばしたものです。

そうやって町の人がどんどん変わっていって、ハッピーな話で終わるのかと思ったところで、

学校から急いで帰る途中、まだだいじょうぶと思って道を横切った時に、まっしぐらに走ってきた自動車にぶつかりました。
(p.203)

最近、とんでもないところで人が轢かれるニュースが毎日のようにあるようですが、パレアナはこれで下半身不随という重傷を負ってしまうのです。そして物語は遠くの病院に治療に行ったパレアナの手紙で終わります。

あたし歩けるようになりました。今日は寝台から窓まですっかり歩きました。六歩です。歩けるというのは、なんてうれしいことでしょう。
(p.279)

同じことであっても、6歩しか歩けないと解釈するのと6歩も歩けると解釈するのとでは天と地ほどの違いがあります。不平を習慣にしている人はどんなに人生を無駄に過ごしているか、思い知らされる作品です。

(引用の頁数は昭和37年発行の角川文庫版によるものです)

 

少女パレアナ
エレナ・ポーター 著
村岡 花子 訳
角川文庫
ISBN: 4-04-221201-8

雑記

今日も大変な状況なのでパスします。といいつつ満員電車の中で読んでいたのはこの本です。

半分あたりまで読んだのですが、Amazon の評価がばらけているのが分かったような気がしました。

 

阿修羅ガール
舞城 王太郎 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101186313

雑記

今日もドタバタしていたので評はパスします。今日は少女パレアナを読み切りました。最後にあんな事件があるとは。

論理的思考のコアスキルは少し読みましたが、やはり難解ですね。ロジカルな書き方ではありますが、いろいろ気になる箇所もあって面白いです。例えば、

〝良く〟思考するためには、多くの知識を持っている方が有利である。思考とは情報と知識を照らし合わせたり繋ぎ合わせたりして意味合い(メッセージ)を探す行為なのであるから、情報が一定でも知識が多い方がより多くの意味合い(メッセージ)を抽出できるわけである。
(p.016)

知識が多い方がマッチング候補が多くなる、という点は異議ありません。その通りです。ただ、その候補が曲者です。例えば間違った知識がたくさんあると思考はどうなるでしょうか。ノイズのような知識、正しいけど矛盾している知識もあります。知識が多いゆえに結論が出せないということはあり得ます。

個人的には、〝良く〟思考するためには、多くの知識ではなく、質の高い知識が必要になりそうな気がしています。