Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

雑記

今日は禅の本を読んだのですが、禅の本は書評を書くときに漢詩を引用するのが大変なので、まあ大変です。漢字が出せないわけです。

禅の話に出てくるような漢文はおそらく全て著作権が切れているので、漢文を全部集めたサイトがあれば、そこからコピって済む話なんですが、これも何かの修行だと思って打ち込んでいます。

 

雑記

今日は『「わかる」とは何か』という本を読みました。

タイトルに「」を付けられるといろいろ面倒なんですけど、このように『』で囲むことでどこからどこまでタイトルかわかるようになります。みたいな話があるのかなと思ったら、もっと論理的読解とか証明とかに寄った内容でした。

今のAIブームは機械的パターン認識するだけですが、それが「わかる」と言ってもいいのか、というあたりを知りたかったのですが、流石にそこまで深い内容はなかったと思います。読み物としては、ある程度の前提知識があれば面白く読めるのではないでしょうか。

 

「わかる」とは何か
長尾 真 著
岩波新書
ISBN:9784004307136

歯車

今日は青空文庫の「歯車」を読みました。芥川龍之介さんの作品です。なぜこれを読んだのか思い出せません。天からこれを読めという声がしたような気もしてきます。

恐ろしくゆらゆらした感じのする話です。崖っぷちで真剣勝負を挑まれたような心境になりそうですが、それに乗ってしまうと負けなのでしょう。

ああ云ふ飛行機に乗つてゐる人は高空の空気ばかり吸つてゐるものだから、だんだんこの地面の上の空気に堪へられないやうになつてしまふのだつて。……

 薄味の料理に慣れてしまうと普通の味付けの料理が食べられなくなるようなものかな、と思いました。

芥川龍之介 歯車

 

戦時の音楽

以前タイトルだけ紹介していた「戦時の音楽」。短編集です。

戦争の話や音楽の話が出てくるのですが、それだけではありません。独特の雰囲気があります。どちらかというと、戦争ではないところが気になる話が多いのですが、例えば「十一月のストーリー」はテレビ番組のプロデューサーの話。

それが聞きたかったんですよ。じゃあ、ちゃんとした文章にして言ってもらえますか。
(p.34)

いろいろ誘導尋問しておいて、最後にそうやって本人にまとめさせるのです。それでインタビュアーが想定した通りのセリフをゲストに言わせることができる、という仕組みなのですが、確かにこれはアナウンサーの基本技能ですね。

「リトルフォーク奇跡の数年間」には、牧師さんが出てきます。

「じゃあ、具体的にはどうやって神は道を示してくださる?」
「耳を傾ければ、神は語りかけてくださいます」
(p.69)

何の解決にもなっていませんが、クリスチャンならこれで納得しないといけないです。それが信仰というものなのです。

「別のたぐいの毒(第一の言い伝え)」は、非常に短い短編。2ページ半しかない。とある家に兵士がやってきます。酒を飲んで調子に乗る兵士。ところが驚きの結末が待っています。

それからの一生、私の祖母は、自分はインクの瓶で兵士を殺したことがあるのだと語った。
(p.84)

一体何がどうしたのか想像できないと思いますが、もちろんインクの瓶で兵士を殺すわけですが、これはどう考えても兵士が悪いのだけど、ひょっとして実話なんじゃないかと思えてきます。

「赤を背景とした恋人たち」は、バッハが現代に生まれ変わる話。君の名は? バッハ。

買ってあげたショパンの楽譜を彼が弾くと、もっとはきはきとしてロマン派色が弱まる感じで、本来とは違った響きになる。
(p.134)

バッハの引くショパンとか、ショパンの弾くモーツァルトとか、実際に聴いてみたいですね。

「爆破犯について私たちの知るすべて」は異色の構成。数行の節に区切られた、メモ書きのような文章が連なっています。途中、本棚の本を紹介するところがあって、

ランボードストエフスキー、アップダイク、コンラッドナボコフ、ムラカミ、ディケンズプルースト、マン。
(p.154)

ムラカミってあのムラカミですよね。爆破犯が興味を持ちそうな作品ってありましたっけ。

「惜しまれつつ世を去った人々の博物館」は、ガス漏れ事故で住民たちが死んでしまい、その遺品を相続することになったメラニーが、持ち物を一つずつ調べていく話。持ち物の中に携帯電話があります。バッテリーは切れていて、充電器がなかなか見つからないのですが、発見して充電すると、

携帯電話のサーバーから十五件の伝言が届いていた。
(p.295)

これはリアルな話ですね。死んだ後に送られてくるメールって、普通、誰がどう読むとか全然想定していないです。少なくとも私はしていません。あまり想像したくないです。pcも同じような問題がありそうですが、こちらはパスワードが分からないとログインできないはず。まあ誰か調べて中を確認するのかな、程度までは想定しています。普通にログインしたらキー配列がヘンなので相当苦労するでしょう。メールをどうしろとか、遺言には書いておくべきなのでしょうね。


戦時の音楽
新潮クレスト・ブックス
Rebecca Makkai 原著
レベッカ マカーイ
藤井 光 翻訳
ISBN: 978-4105901486

ことば散策

今日は岩波新書、何となく手に取ってしまった「ことば散策」という本。いろんな言葉について由来やら誤用の指摘やらのコラムを集めた感じの内容。

例えば十銭ストアという言葉が出てくる。これは今でいうところの100円ショップみたいなものか、と補足もしながら、十銭文庫も話題に出たところで、

『エロエロ東京娘百景』(壺岐はる子)だとか、『麻雀必/ 勝法』(廣津和郎)、『短歌入門』吉井勇)
(p.46)

エロエロ東京娘って、そんな本があったのかと驚くよ。こういうのはググってみたくなる、ていうかググってみた。2017年に復刻されていた!

この頃、既に「子供の科学」があったという話も出てくる。今は子供の科学は休刊だっけ。大人の科学というムックがあるのは有名な話だが、そのうち老後の科学という本が発刊されるに違いない。

知らない言葉もいろいろ出てくるが、

「そういう軟弱なことばではいけない。そこはフチフシキノカンニといわねばならぬ…」
(p.61)

これは旧制第二高等学校のH先生、ドイツ語の授業の中での言葉らしい。不知不識の間、のこと。なかなかパワーのある言葉のようだ。

誤用の指摘も結構ある。これは痛烈であるが、

身をこなにして、丸丸党の発足にあたりまして、
(p.69)

これは身を粉にして(こにして)のことではないか、という話がこの後ネチネチと続いてオモチロイのだが。丸丸党って実世界では何なんだろ。1994年の秋にできた党らしいのだが、個人的に思い当たらない、ていうか忘却の彼方。

「尤」という字も話題になっている。この字は最近は殆ど見る機会がないのではないだろうか。統計学では「最尤値」という言葉があるが、ここには最も尤も両方出てくる。maximum likelihood ということで、意味としての違いは明確だが、

尤 は 最 とは別だ、此字は比較せず単独にスグレタのだ、
(p.89)

スッキリ説明している。漢字は単独で意味を持っているのだから正しく使い分けろ、そうしないと意味が通じないという当然の話ではあるが、実際は相手が知らないのならどうあれ通じないものは通じないのである。

培う、という表現について。「文化をつちかう」という表現はおかしい、「文化につちかう」であるべきだという話が出てくる。もともと「培う」は土を与えるというような意味だから「に」だという主張のようだ。これは成城学園校歌に、

内なるものを培わん
(p.161)

という一節があって、それにクレームを付けたという話なのだが、これを教授に問うたところ

お前さんのいうところは尤もだが、まあいいじゃないか
(p.161)

と言われたというのが面白い。「尤」であることは認めるが、堅いこというなと。世の中そんなものだ。


ことば散策
山田俊雄
岩波新書
ISBN: 978-4004306283

浮雲

国語の教科書にはまず間違いなく名前が出てくるレジェンドの小説だが、実際に読んだ人はどれ位いるのかよく分からない。

現代化してアニメにすればそれなりにファンも付くような気がするが。主人公は内海文三。性格は行動に移せない系。しかもリストラされてしまって無職。従姉妹のお勢に気があるのだが、それも全然伝わらない。横からチャラい本田昇がちょっかいを出す。怒った文三は本田に絶交を宣言する。

「本田。」
昇は飲みかけた「コップ」を下に置いて
「何でゲス。」
(p.144)

もう戦う前から敗けているような気がするが、文三は昇の助けを借りればリストラされた役所に復職できるかもしれないというのでイライラしている。

解説には次のようにまとめられている。

文三は他には能はないにしろとにかく高潔な青年であるこの点で僕は卑賤な昇に数等優る人物であることには間違いない。だが実社会の生活ではなぜ文三は昇に敗れるのか。人間は社会に立つには卑賤でなければならぬのか。二葉亭が『浮雲』に提出した根本の疑問は以上のようなものであった。
(pp.226-227)

サクッと読んでみるとそんなに仰々しい話のようには見えないものだが、まあ時代というものもあろうし(この解説が書かれたのは昭和16年3月)、当時としては画期的な作品だったろう。ただ、文体がアレなので、今時のラノベに慣れている人にはちょっと苦しいかもしれない。


浮雲
二葉亭四迷
岩波文庫
ISBN: 978-4003100714

雑記

今日は何となく読みたくなったのでこんな本を読み始めました。

今更バカの壁もないかと思ったのですが、何でも分かるとは限らない、という当たり前のことが分からない人がいる、というのも当たり前なのでしょうね。