Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

雑記

今日は暑かったので、地下から紀伊国屋書店に行ってきました。新宿は地下をマスターするとこういう日は結構楽に移動できます。買ったのは高校物理の参考書。

物理の参考書は何がいいのだろうか、いまいち分かってないのですが、何冊か立ち読みしてみて比較して、これがいいんじゃないかと思ったので買ってみました。

上下巻になっていて、上が力学・波動で、下が電磁気・熱・原子となっています。

 

導出物理完全版 力学・波動編 上
児保 祐介 著
微風出版
ISBN: 978-4434245190

導出物理完全版 電磁気・熱・原子編 下
ISBN: 978-4434245206

魔法科高校の劣等生 九校戦編

今日は先日紹介した「魔法科高校の劣等生」の3~4巻、「九校戦編」です。

魔法高校のインターハイのようなものです。魔法を扱う学校が全国に9校しかないので九校戦というそうです。魔法スキルの高い深雪は選手として出場するのは当然ですが、メカに詳しい達也が調整スタッフとして参加することになり、そこにマフィアが攻撃をかけてきて…というサスペンス的なシナリオになっています。ていうか入学編もそうでしたけどね。

試合は魔法バトルになるので、バトルシーンがたくさん出てきて楽しいものですが、前編と同様、格言的な内容がサラっと出てくるのがスパイスになっています。

人という生き物は、一部の例外を除いて、見たいものしか見ないようにできている。
(3巻、p.211)

まあそうですね。スルー力とか。余計なものばかり見る人もいたりするような気がしますが、まあ本能的に気に入らないものは「見なかったことにする」というオトナのスキル【魔法?】もあるし、逆にそれがないと今より世界は暮らしにくくなっていそうな気がしますね。ただ、余計なフィルタをかけてしまったのが大事故の原因になることもよくあるわけです。一長一短ですね。

次の言葉などは、中国の古典に出てきそうな話です。

使い方を誤った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣るのだ。
(3巻、p.273)

老魔術師、九島烈のお言葉なんですが、レベルの差だってありますけどね。どんなに工夫しても超絶大魔法には勝てない、というようなケースもありそうで案外ないものです。

前回、この小説の魔法とプログラミングの対比をいくつか書きましたが、

今までに見たことのない、美しい魔法だと感じた。
(4巻、p.103)

魔法が美しいというのは全く想像できませんが、私はプログラマーなので、プログラムの美しさは感覚として分かります。このストーリーは、そういう意味でも魔法とプログラムの共通点が発見できるような気がしています。プログラムの美しさというのも、かなりハイレベルのプログラマーでないと分からないのです。

誰にでも使える、と、誰もが同じように使える、とでは意味が違う。
(p.396)

これはミラージ・バットという競技に出てくる話ですが、プログラムの場合も、誰でも書けるということは、誰でも同じように書けるという意味ではありません。同じ動作をするプログラムはいくらでもあって、効率や速度に物凄い差が出ることも珍しくないのです。下手なプログラマーが書いたプログラムをシニアプログラマーが修正したら100倍速くなった、みたいなことは日常茶飯事なのです。

話を戻して九校戦編ですが、分量は多いけど割と一気に読めるような気がしました。女子の入浴シーンとかも、なかなかいい感じです。観客として紛れ込んでいる独立魔装大隊の軍人達もスーパーマン的に強烈でなかなかエラそうな所もいい感じです。


魔法科高校の劣等生〈3〉九校戦編(上)
佐島 勤 著
石田 可奈 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048709989

魔法科高校の劣等生〈4〉九校戦編(下)
ISBN: 978-4048709996

河のほとりで

今日は葉室麟さんのエッセイ集、「河のほとりで」。数ページのエッセイが「河のほとりで」「書物の樹海へ」「日々雑感」の3つに分類されている。

「河のほとりで」は歴史ネタ中心のエッセイ、「書物の樹海へ」は本の解説を集めたものだと思う。「日々雑感」はそれ以外の雑記的なもの。

「河のほとりで」からいくつか紹介してみると、

 ところで、わたしたちは第二次大戦という大きな悲劇の後、〈悔恨の時代〉を生きてきた。だが、近頃では〈悔恨〉は遠いものだとする風潮があるようだ。
(p.029「悔過 女帝の世紀」)

悔過は「げか」。世紀というのはここでは奈良時代を指す。こんな感じで、歴史的な話を取り込みつつ、現在の行き方、人生論のような話題まで広げて語りかけてくる。ここでは第二次大戦という言葉が出てくるが、戦争の話は、この本には何度も出てくる。

西欧型の近代国家とは、植民地獲得に明け暮れ、自国の利益を貪るという意味で自らを愛する国であり、西欧国家に追随し、模倣した国造りをしたわが国は、だからこそ敗れたのではないか。
(p.037「西郷隆盛」)

西郷隆盛が西洋を野蛮と言い切ったことから続いてきた話。敗戦の理由は西欧に及ばなかったからではなく、真似したからという発想が何か面白い。

軍国主義の時代、戦争協力を当然のごとく叫び、意に従わない者を声高に避難した〈愛国者〉は多かったに違いない。だが、戦後になって、そのひとたちは自らがしたことを悔いただろうか。
(p.041「藤沢周平文学」)

これは藤沢周平さんが学生時代ちょうど戦争で、級友たちをアジったのを後悔したという話から来ている。山田風太郎さんの日記にも敗戦直後にコロっと方向転換する人達が出てくるが、無節操な人達は実際に大勢いたのだろう。

ちょっと意外だったのが、

学徒出陣の出征兵士がセンチに持っていった本でもっとも多かったのは万葉集だという。
(p.081「ますらおぶり

万葉集には防人の歌なども収録されているが、これを出陣で持っていくというのは私の感覚ではよく分からない。なお、この回のコラムは斉藤茂吉が題材となっている。

「書物の樹海へ」には、解説する本の中から引用されている言葉も出てくる。巻末の解説に出てくるような表現は、一冊の中でも特に印象的なものが多いから、見ごたえがある。

――たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか、こうして恥をしのぶからだ。
(p.180「もの作る者は闇を駆ける」)

これは浅井まかてさんの「眩」という小説の解説。

言葉は北斎の言である。プロとアマの間に超えられないような一線が引かれているのだ。それを「恥」で説明するというのがまたプロっぽくて面白い。

 

 

河のほとりで
葉室 麟 著
文春文庫
ISBN: 978-4167910204

魔法科高校の劣等生 入学編

いろいろ途中になっていますが、どの続きでもなくラノベで「魔法科高校の劣等生」。この期に及んでタスクを増やしてどうする、と自爆しておきます。

アニメ化されており、それなりに有名かと思いますが、魔法科高校とは何か、という所から説明しないと話が見えない人もいると思いますけど、魔法系のストーリーは背景が多すぎるので、説明は超ざっくりになりそうです。詳細に興味のある方は、恐縮ながら Wikipedia でも見てください。確か詳しすぎるみたいな警告が出ているレベルで詳しいです。

今回紹介するのは1~2巻の「入学編」です。主人公2人が魔法科高校に入学して生徒会、風紀委員会の委員になってトラブルに巻き込まれて解決する、という話です。意外と短くまとまってしまった!

ラノベで魔法といえば「とある」シリーズが有名で、「とある」は超能力と魔法が共存・並行した世界ですが「魔法科」は背景世界が魔法に特化しています。この魔法は超能力の延長という位置付けで、後述するようにITの概念の影響が見られます。

主人公は司波達也司波深雪の兄妹、というのが実際に近い解釈だと思いますが、タイトルに「劣等生」と付いているので、劣等生という扱いになっている達也が主人公としておきます。ただし、劣等生といっても実際は違います。「とある」の主人公の上条当麻はレベル0、本当に無能力という設定ですが、達也は評価上の表面的劣等生で、実は超一流、ほぼ何でもできるスーパーマン、あるいは忍者という設定になっています。

魔法科高校は入学時の成績で優秀な一科劣等生の二科に分かれています。達也は成績が悪いので二科の生徒ですが、深雪は主席で新入生代表になっています。この分類が元で一科の生徒が二科の生徒を見下すというありがちな状況になっています。リアル高校でもありそうですね。特進クラスとか。格差というより、差別が入学編のテーマにもなっています。

最も差別意識が強いのは、差別を受けている者である、
(1巻、p.31)

もっとも、一科と二科の待遇の違いは能力差を理由にした分類が元になっているので、差別と解釈していいかどうかは微妙なところでしょう。少なくとも今の日本のリアル社会では、成績で振り分けることは差別とはみなしていません。特進クラスに入りたければテストで高得点取れ、それだけです。

ただ、このストーリーで重要なのは、当事者が能力差ではないところに差別的な意識を持っている点でしょう。リアルな世界で成績が悪いために劣等感を持つ生徒がいます。それが何か共感を与えているのかもしれません。ただ、この話、達也は劣等生ではなく事実上スーパーマンなので、どこまで共感できるかは謎ですが、ストーリーの魔法が使える人間と使えない人間という合理的な格差が、現実社会の偏差値が高い生徒と低い生徒の合理的な格差にマッチングしている、といったところでしょうか。

社会が魔法によって階級分けされると、当然それに反抗する勢力が発生します。今回出てくるのはブランシュという反社会的団体です。結局そのリーダーが絵に描いたような馬鹿野郎なのでもう少し何とかならんのかと思いましたが、何か参考にしたのですかね。いずれにしても、異端者には常識は通用しません。

「その『当たり前』が通用しないから、ああいうおかしな連中が蔓延るんだよ」
(2巻、p.91)

ここで「当たり前」というのは、魔法科学校に入るのは魔法を学ぶためである、ということを指しています。おかしな連中というのは魔法を否定しているのに魔法を使う、そこを指摘したセリフです。魔法師は優遇されているそうで、平均年収も高いらしい。

魔法師の平均収入が高いのは、社会に必要とされる希少スキルを有している魔法師がいるからだ。
(2巻、p.93)

平均収入のマジックです。普通の収入の魔法師もいるってことですね。プログラマーもスゴい人は年収で億に届くそうですが、日本の場合はIT土方という言葉がある位で、両極端に超流動的に分布しています。

少し話を戻して、一科と二科ですが、先生は優秀な一科に多く付くことになっています。二科の方がデキが悪いのだから、そちらに先生を割かないのは不公平じゃないかという話が出てくるのですが、むしろ正当という意見があって、

「見込みのありそうな生徒に手を割くのは当然だもの。ウチの道場でも、見込みのないヤツは放っとくから」
(2巻、p.120)

日本の義務教育は、できない生徒に補習することはあっても、できる生徒にさらに上を狙った課外授業を与えることはあまりないような気がします。やる気のない奴はやらないだろ、という考え方も成立しそうですが、ここはそうではなくて、できない奴にはまず自分でできることをやらせるのです。剣道でいえば素振り1万回とか、そういう世界のことでしょう。プログラマーになりたい奴はまずプログラムを写経しろという話、最近どこかで見たような気がしますが。

まず、刀を振るって動作に身体が慣れないと、どんな技を教わっても身につくはずが無いんだけどね
(2巻、p.123)

技術は絶え間ない一見無駄な努力の繰り返しによってのみ上達するわけです。まず体で覚えるべきことを覚える。それが重要。

そもそも魔法無しでやれないヤツが、魔法って余計なモンを上乗せしてまともに動けるわけねえんだ
(2巻、p.228)

何か基礎重視な発想があって面白いです。このラノベ、この種の教訓的な逸話が結構あるのですが、作者さんのカラーなのでしょうか、それとも何か第三者のお告げでもあったのか。

ITの話を少ししたいのですが、この話にはCAD (Casting Assistant Device)という機械が出てきます。

現代の魔法師は、杖や魔道書、呪文や印契の代わりに、魔法工学の成果物たる電子機器、CADを用いる。
(1巻、p.68)

ホウキ(法機)と呼ぶこともあります。魔法は単独で発動できるのですが、いろいろ面倒なので機械を使うという前提です。

CADには感応石という名の、想子(サイオン)信号と電気信号を相互に変換する合成物質が組み込まれており、魔法師から供給されたサイオンを使って電子的に記録された魔方陣――起動式を出力する。
(1巻、p.68)

方陣たる「起動式」はプログラムだと考えるとイメージしやすいでしょう。つまり、魔法を使うという行動はプログラムを実行するのと同じことです。次のような表現も出てきます。

 組み込まれたシステムが作動し、起動式の展開が始まる。
 起動式とは魔法の設計図であり、直接的には魔法式を構築するためのプログラムだ。
(1巻、p.104)

インタープリタがコードを実行するような感じですかね、むしろコンパイラか。コンパイルしてラン。原理はフィクションなのでアレですが、達也は CAD というハードウエアをメンテする達人という設定です。IT的にはスーパーSEって感じ。どの程度スーパーかは、

「ほう……どうやら君は、展開された起動式を読み取ることができるらしいな」
(1巻、p.109)

特殊技能で、これができる人は殆どいないことになっています。プログラマーでいえば、コンパイルされた中間コードやマシンコードを見て動作が分かるという感じでしょうか。

CAD という機械によって、魔法という一般的に最もわけの分からない能力が一気に説得力のある存在【謎】になっているのが、このラノベの最大の特徴だと思います。「とある」は最初から最後までわけの分からないまま突っ走っているので、世界が重ならないように注意しつつ進めていったのでしょうか。

ところで少し余談ですが、この話には面白い交通機関が出てくるので紹介します。

キャビネットと呼ばれる、中央管制された二人乗りまたは四人乗りのリニア式小型車両
(1巻、p.72)

通勤・通学に使われているそうです。定員からイメージすればリフトのようなものでしょうか。個人的には車両というよりも道路の上を皿に乗ったキャビネットが道路を流れていく巨大回転寿司のようなイメージなのですが、こういう交通機関は欲しいですね。東京オリンピックには間に合わないと思いますが、首都圏でぜひ実現して欲しいと思います。


魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上)
佐島 勤 著
石田 可奈 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048705974

魔法科高校の劣等生〈2〉入学編(下)
ISBN: 978-4048705981

雑記

今日も慢性的にアレなので書く暇がないですが、明日はまとめる時間があるかもしれません。何をまとめるかは謎ですが。

というだけではアレなので、今日読んだ「言志四録」から一つ紹介します。

殊不知天下無無用之物。則亦無無用之事。(言志録、一〇五)

世の中に必要ないものはない、という話ですね。多分。

雑記

もう慢性的ですが、今日も忙しかったので、といいつつ「言志四録」は、また4ページがその程度読みました。紹介したい言葉はたくさんあるのですが、漢字に変換するのが難儀なのでほぼ挫折しています。