Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

図書館の本を汚したとき

今日は書こうと思っていた本が雨で濡れてしまってえらいことになったので、ちょっとお休みである。しかも図書館から借りている本なので困った。汚れていない本と交換して返却しろといわれるかもしれない。

汚れていないというのは、新品でも古本でも、きれいならokという意味である。

以前、無門関という本を図書館で借りたことがある。禅の本である。

この本を地下鉄で読んでいたら、なぜか地下鉄にがいた。しかもこの蚊が本に止まったのである。その時に、思わず本を閉じてしまったら、蚊が血を吸っていたものだったから、血の染みが本に付いてしまった。

字が読めなくなるような染みではない、蚊が吸った程度だからごく小さなもので、文字にかかってすらいない。図書館に持っていき相談すると、これでも汚れとしてダメだから綺麗な本と交換するようにと言われたのだ。現状回復ということか。このときに、交換する本は新品でなくても古本でも構わないということを知った。

この染みのついた無門関は今も自宅にある。何かの因縁なのだろう。

 

くちびるためいきさくらいろ

何か難しい本に手を出したら3日ほど悩んでいるけど書評になってくれないので、軽いので間をつなごうと思ったらそういうネタすら見つからなくて、アタフタしているうちに結局これになっちゃいました(笑)。

【honto 電子書籍】【全1-2セット】くちびるためいきさくらいろ

百合系です。1話ずつでそれぞれ読める形式になっているけど、第1話の瞳と奈々のペアの話が一番多くて、第5話から第12話までが二人の話。しかし個人的には第3話に出てくる安倍ちゃんと橘さんがいい感じですね。

う…後ろ手に
しばって…
ちゅうした…!?
(1巻、p.53)

過激です。劇の練習で囚われのお姫様の役を作るというのでこうなったのですが。前回のAKB48オールナイトニッポンでキスの特集やってたけど、「キス」と「ちゅう」のどっちがいいという話題で「ちゅうしない?」と言った方が成功率高いという話は本当なんですかね。お姫様の安倍ちゃんは奈々と同じ学校なので、第8話でも出てきます。この時はもう先輩の橘さんが卒業して会えないのでテンション下がっています。携帯で連絡とかしてないのかと聞いたら、

…携帯もって
ないの…
何か用が
あるときは
電話か…
電報なの…
(2巻、p.19)

ページ数合ってるのかな、ほぼ断ち切りなので何ページか確認し辛いです。ていうか電報って今の人達にも通じるのですか? 死語のような気もするけど、祝電は今もあるのかな。このマンガはまだスマホの前の時代のようです。この後、橘さんも携帯 get して、安倍ちゃんに写メを送ります。写メも今は死語なのか?

立花さん
カメです。
(2巻、第10話)

もうページ数分からんから10話でいいや。何でカメの写メを送ったのかは全然分からないけど安倍ちゃんは結構嬉しそうです。ちなみに私はスマホで最近、空ばかり撮っています。

第14話の絵に描いたような(マンガだからその通りなんだけど)文芸部長の野坂さんも面白いです。季節はずれの進入部員の後輩の女子に告られた後、生活パターンが変わって友達に見破られます。

あんた男が
できた
でしょう?
(2巻、p.150)

男じゃないんですよね。この後輩が野坂さんを好きになった理由が、野坂さんの書いてた小説がきっかけだというのが、少女マンガみたいな話でいい。

肺を患った少女と
サナトリウム
庭師の少年の恋…

次号では古本屋の娘と
書生の少年の恋…

その次は花屋の少女と
大学教授の恋……

どれもこれも
イマドキありえない
夢見る少女小説
(2巻、p.160)

読んで見たくなりますね、少女小説。このマンガ、カバーを外しても何にもないのだけが残念です。第2話の幽霊さんとか、第13話のフルートの上手な絵里ちんとか、紹介できなくてすみません。


くちびるためいきさくらいろ(1)
森永 みるく 著
アクションコミックス
ISBN: 978-4575840582

くちびるためいきさくらいろ(2)
ISBN: 978-4575840599

神の守り人〈下〉帰還編

昨日紹介した「神の守り人」の下巻、帰還編です。

【honto 電子書籍】守り人シリーズ電子版 6.神の守り人 下 帰還編

逃亡はピンチの連続の後、結局失敗して連れ戻されてしまうのですが、その前にまず狼に襲われます。バルサも頑張るのですが、

だが、狼はあまりに多かった。
(p.45)

万事休すというところでアスラが究極魔神タルハマヤを召還してしまい、たまや~、という感じでアッという間に狼を殲滅します。後日、バルサがアスラに言うのですが、

……狼を殺したときの、あんたの顔は、とても恐ろしかったよ
(p.139)

そりゃ怖いですわ。人間と神とでは勝負になりません。

この後、一行は罠にかかってバルサは吊り橋を切られて凍てついた川に落ちてしまいます。よく川に落ちる人なのです。今回は今までにも増してバルサが瀕死の重傷になりますが、こんなことを言っています。

人に頼れば、心に隙が生まれる。つらくて、弱みを見せれば、だれかがそれを利用するかもしれない。――命は、自分の身体と頭とで守れる分だけ続いていくもの。自分で守れないときは、ここまでの命だったと、諦めるしかない。
(p.111)

死にかけていたときのバルサの言葉ですが、割り切ってますね。全編を通じて、バルサの思想は独特で、今の人達【謎】とはちょっと違った印象を感じます。何か近いキャラはいないかなと思ったけど、例えば「永遠の0」のパイロットの宮部久蔵かな。刃物を振り回すというところでは木枯らし紋次郎なんかかなり似てます。戦い優先ではなくとにかく関わりたくない的なところも。プリキュアって「勝つ」よりも「負けない」優先らしいですが、そういう思想? 宮本武蔵もそうですよね、勝てない相手とは戦わない系。

そもそも、敵を殺せばそれで解決ではないという話も。

憎いやつを殺せば、すべて片がつくわけじゃない。
(p.135)

結局、自分の中にいる敵が問題なんですよね。


神の守り人〈下〉帰還編
上橋 菜穂子 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101302775

神の守り人〈上〉来訪編

守り人シリーズの第5作。この話は上下巻になっています。今回は上を紹介します。

【honto 電子書籍】守り人シリーズ電子版 5.神の守り人 上 来訪編

上巻はバルサがチキサとアスラという子供の兄妹を連れて逃亡するお話になります。今回のキーマンはアスラ。man じゃなくて girl だけど、世界を滅ぼせるパワーをもった神が憑依します。神なのかなこれは。悪神?

物語は悪役が面白いといったのは河合隼雄さんだと思うけど、今回の悪役はシハナ。自分が悪いと思っていないところが一番悪い。

自分が勝利する形をまず想像しておくの。それから、自分の動きで、相手をその形に導くのよ。それだけ。
(p.63)

シハナの戦術です。これでうまく導けるから連戦連勝という話がありますが、相手がノッてこない時はどうすればいいのでしょうか。

バルサは今回も酷い目にあって死にそうな怪我をしますが、案外怪我の治りが早いです。コツは食べて寝ること。カリオストロの城ルパン3世のようですな。ヒーリングのスキルが重要なのはRPGとかやってれば分かります。

傷ついたり、弱ったりすれば、それがすぐに死につながる獣たちにとって、傷の治りが早いかおそいかは生死を分ける。
(p.74)

理屈っぽい呪術師のスファルが過去の歴史を語るところの台詞にも注目です。都合の悪いことも美化しないでそのまま伝える理由について、次のように答えます。

それはな、忘れさせないためだ。記憶を風化させないためだ。
(p.200)

歴史はフィクションではないのだから、事実でないと意味がありません。その中にはあえて酷いことまで含めないといけない。そうしないと抑止効果が失われてしまいます。

風化といえば、一般には“中国人は忘れない”そうです。だから国交は正常化しても中国人は日本を許さない。100年程度ではダメで、いつまでも忘れない。これに対して日本人はすぐに許してしまう、すぐに忘れるそうですが、とんでもない。ちゃんと覚えてますよ、毒入りギョーザも、賞味期限切れチキンナゲットも。だから私は中国産の食品は買いません。メタミドホス入りの食べ物なんて食べたくないので、100年後も買っていないと思います。多分、その前に死んでますけど。


神の守り人〈上〉来訪編
上橋 菜穂子 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101302768

喜連川の風 参勤交代

時代小説。天野一角が無理難題を片付けるシリーズ3作目。

【honto 電子書籍】喜連川の風 参勤交代

喜連川藩の宿場は参勤交代の宿として使われる。これがバッティングしてしまった。

同じ日に織田家と伊達家が本陣を使うことはできないはずです
(p.19)

そりゃ当然の話で、両家を怒らせずにうまく凌ぐにはどうするかという話。次から次へと難題が出てきて大変なことになる。交渉に行ったら途中で荷物を置き引きされるし、宿屋は火事になる。店がボロいので普請しろと命じても金がないといって言うことを聞かない。大名行列が来るのに食材の魚も肉もない。それどころか料理人がいない。こんなにアタフタして無事で済むのとかという状況なのだが、剣の達人の一角が全部何とかしてくれるから、こりゃ面白い。サクサク読み進めることができる。

その天野も街道に石畳を敷けといわれて少しキレかける。

「いえ、できないものはできない、わからないものはわからないと申しているのです」
「それが口答えというのだ! できるかできないかは調べてからいうべきではないか。わからないもの、わかるものも同じだ」
(p.181)

言い訳はいくらでもできるのだが、相手が上役だからどうしようもない。もちろんこの程度のゴタゴタは一角、簡単にクリアしてやり過ごすのだが、できるかできないかは調べてから言えというのは一理あるような気がする。ソフト開発でもこういうのはよくあって、できるかできないかは先に調べて、試作してみると納品レベルに近いものが出来たりする。ほぼ出来たというのは黙っておいて「恐らく納期内にできます」と答える。

江戸で19年修行したという料理の鉄人を連れてきて、ご家老に試食してもらうところの料理は実に美味そうだ。

石板を熱し、それに肉の切り身をのせ、塩を振り、焼けたところで柚汁を振りかけ、醤油ダレをつけました。
(p.283)

美食家の老中に絶品と言わしめた石板焼き、普通にステーキで、肉は猪か鹿だ。これは食ってみたくなる。


喜連川の風 参勤交代
稲葉 稔 著
角川文庫
ISBN: 978-4041043653

つるた部長はいつも寝不足

美術部ラブコメです。つるた部長がいろいろエロい妄想をします。とはいってもそんなにスゴいシーンはありません。

【honto 電子書籍】つるた部長はいつも寝不足

個人的には保健の先生のボケっぽりがいいですね。裏表紙の1コママンガ(?)のネタになっていますが、この先生、名前がないんですよね。

……胸って
もんだら大きく
なりますかね?

あ それ
ウソよ

え!?
そうなんですか!?

だって変わらな
かったもん
(1巻、p.48)

何も実験して確かめなくても…、ていうかこれ普通にやってるものなんですか? 水瀬マユさんの「むすんでひらいて」にも揉めば大きくなるネタは出てきますけど、揉むのは本人じゃないけど。とにかくヘンな質問も真面目に答えてくれるいい先生なのです。

つるた部長は美術部の部長のくせに美術の素人という設定です。エッチングという言葉を聞いて、

えっち進行形!??
(1巻、p.102)

ベタな妄想ですけど、これならいくらでもイケそうですね。ていうか美術部でないと知らないようなレベルの知識じゃないと思いますけど。ちなみに第5話の写真ネタも面白いです。

登場人物としては、部長の胸をもんだ江原さんが熱血系で光っています。念のため書いておきますがこのマンガは胸モミマンガではありません。そんなシーンは殆どないです。江原さんの印象に残るシーンは、コンクールに出品する作品を描けなくて諦めかけている部長が、

がんばっても
できないひとの
気持ちなんか
わかんないよっ!!
(2巻、p.139)

と言ったらすかさず、

そんなん言うやつは
がんばりが全然
たりねーんだよ
(2巻、p.140)

ありがちですが、有難いお言葉です。この人の名台詞をもう一つ。

本にはなぁ…
魔物が
すんでんだよ!!
(3巻、p.20)

どんな魔物かはネタバレ(笑)になるので読んでください。ソレ? みたいな話です。

2巻からは瀬戸のお兄さん、3巻から絵の下手な宇佐美が登場しますが、最初のドタバタぶりが最後で少し盛り返したのと、最後のオチで無理やり寝不足で落としたのは逆にびっくりしました。


つるた部長はいつも寝不足 1
須河篤志
メディアファクトリー
ISBN: 978-4840133340

つるた部長はいつも寝不足 2
ISBN: 978-4840133975

つるた部長はいつも寝不足 3
ISBN: 978-4840140317

銀河鉄道の夜

先日紹介した「銀河鉄道の夜」。今回は、ますむらひろしさんがコミックにしたものを紹介します。

【honto 電子書籍】銀河鉄道の夜

この本には、本編だけでなく、ちくま書房版に出ている第三次稿をマンガにしたブルカニロ博士篇がも収録されています。宮沢賢治さんは第三次稿の後に第四次稿を書きましたが、ますむらさんは逆でブルカニロ博士篇を後から書いたという順序の逆転があるので、最初に書いたマンガと何が違っているかを見比べてみるのも面白いです。

このマンガでは、登場人物がになっている以外は、基本的に極めて忠実に原作通りに描かれています。特に言葉については、宮沢賢治さんの表現をその通りに使っている箇所が多く、このため現代日本語に比べると違和感があるのですが、かえってそれがファンタジックな不思議な世界を作り上げています。

あとがきにありますが、最初のマンガを描いたときには三角標の意味が分からず、想像で描いたら、読者から、

それは三角測量をする時、山中などで測量の際、丸太を組みあげたもののことです。
(p.322)

という指摘があったそうです。ブルカニロ博士篇では、三角標がこの形になっています。

ところで、前回紹介した賛美歌の番号が欠落している件ですが、最初の話では306番(p.77)、ブルカニロ博士篇では249番(p.228)となっています(第21刷)。この歌はマンガの中では「主よみもとに」となっています。この歌は物語中では船が沈没するエピソードで描かれていますが、タイタニック沈没のときに演奏されたことで有名です。「主よみもとに」は賛美歌320番で、アニメ「フランダースの犬」の最終回でネロが天国に行くときのBGMにも使われています。賛美歌というとクリスマスのイメージがあるかもしれませんが、この賛美歌は死ぬときに歌う歌なのです。


銀河鉄道の夜 (ますむら・ひろし賢治シリーズ)
ますむら ひろし 著
宮沢 賢治 原作
扶桑社文庫
ISBN: 978-4594016982